カワウソ

ハッチング―孵化―のカワウソのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
4.0
初見です。
何か映画を観た時の予告で知って観ました。

「主人公が常にストレスを受け続ける系映画」はあまり得意ではないのですが、本作はとても観やすかったです。
以下の4点が良かったのかと思います。
1、主人公が子供
2、よくある精神病患者扱いパートが無い
3、映画のツッコミ所を逆に利用している
4、ストレスが精神的なものに絞られている

1
主人公に対する共感が、ダイレクトでなく自分の過去の記憶と結び付くので、一歩引いた目線で鑑賞できました。
結果、共感度を下げることなく、生々しさが懐かしさによって程良く中和された気がします。

2
この手の映画の最あるある「主人公に起きている事が周囲には理解されず精神病患者扱いされる」これ本当に見飽きました。
最初から舞台が病院ならまだしも、大抵中盤から終盤手前までに来るこの展開は、ラストに向けての障壁としては物足りなく、ましてや加速装置どころか物語を停滞させがちです。
これが無いお陰でティンヤの問題に集中できました。

3
「あんなデカい卵、卵の時点でバレるだろ」「何でこんなに鳴いてて気付かれないんだよ」等々、映画である以上潰しきれないツッコミ所が本作もたくさんありました。
しかし、主人公が子供なのでアッリ周りで雑さや穴がある事は当然です。
にも関わらず気付かない両親に問題があります。
他の映画では集中の邪魔にしかならないツッコミ所が、本作では両親の無能さを際立たせる機能が備わっていて、本当に上手いです。

4
アッリはティンヤの娘であり分身です。
特に無意識の暴力性のメタファーとしての存在が強かったように思います。
そんな中、仮にティンヤが大人達から暴力まで受けているとアッリの暴力を否定しきれなくなります。
それどころかアッリが強行に出るシーンでは、アッリを応援してしまう気もします。
ストレスを精神的なものに絞った事で、逆に最初から最後までハラハラが確保できたのではないかと思います。
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