ちょこ

大いなる自由のちょこのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.6
何を書こうか迷うな…

印象に残ったのは煙草、炎、暗闇。
映し方が好きだった。

時系列が割と早めのテンポで変わるから集中力は必要だけど、ハンスの見た目が時系列によって全然違うから個人的には分かりやすかった。
俳優さんの身体の張り方半端ないと感じた。。

全体的に暗めだし、辛いシーンも多いとは思う。けど、それ以上に感じるものがあった。
生々しいシーンも盛り沢山なので、1人で観に行くことをオススメします。笑
でも嫌なイヤらしさではなく、私はとても繊細で美しい撮り方だと思った。

ハンスとヴィクトールの間には愛情では割り切れない何かが存在したんだなと思う。
それはどのタイミングで生まれたとかは、きっと2人にも分からない。

オスカーとの話はとにかく美しくて、辛かった。愛し合っているのに同性というだけで罪だなんて可笑しい、馬鹿げてる…2人の心のすれ違いも辛かった。自由を求めるハンスの勇気も、オスカーの恐怖も、きっと2人ともが同じ気持ちを抱いている筈なのに、その大きさの度合いで、きっと2人はすれ違った。
ハンスが撮ったオスカー、綺麗すぎてびっくりしたな… 同時に、オスカーが撮ったハンスも素敵だった

レオとは一瞬だったけど、あの一連で、お願いだからハンス、あなたが幸せになって…と心から願った人は多いはず、、

そして、そのオスカーとの事もレオの事も見てきたヴィクトール
ヴィクトールはただただ優しい男なんかではない
むしろ好き勝手にハンスを振り回してきたし、酷い言葉も沢山浴びせている
でも、タトゥーを彫ったり、看守から身を呈して守ったり… なんだかんだ、ここぞって時には守っていたのかなと思ったり
タイトルにもなっているシーンは本当に辛かったですね。そういう背景があったのか、と
抱き締めてくれてありがとう

ヴィクトールを案じて薬を止めるハンス、介抱しているシーンは健気さに心が打たれます。
窓をこじ開けようとしていたのは、本気では無かったんじゃないかな、気持ちの表れで。
言葉にはしない2人の気持ちがヒシヒシと伝わってきてしんどかった
そしてラスト。
その後を想像させてくれるラストで面白かった
音楽のないエンドロールも、映画の雰囲気に合っていてとても良かった。
全体的にこの映画は"静と動"を音で感じさせてくれたので、あの静かな中で聞こえる周りの観客の息遣いや足音が、映画の続きみたいで私は好きだった。

ゲイバーとハッテン場のシーンは音楽がゴチャゴチャしていて私はあまり好きになれなかった😅
↑この感覚こそが正解なのか?ハンスがそこを選ばなかった理由…

ていうか、ハンスとヴィクトール、お互いに「ほっとけねぇなコイツ」って思ってそうで好きです。

なんて可笑しい法律だって思うけど、本当にあったんですよね
非人道的だし今となってはありえない。奪われた彼らの人生を、これからを生きる私達は考えないといけないと思った。
まあそんな大それたこと言う立場でもないけれど

良い作品でした。上映館が少なくて観れるかどうか微妙だったけど、やっぱり劇場で観れて良かったです。


p.s 劇場から出たらショッキングなニュースが…
私的に嫌にタイムリーな感じがしてしまった。
法律が変わっても、国が違くても、心の根っこは令和の今でも変わらないんでしょうかね。
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