ひゅうどんこ

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性のひゅうどんこのレビュー・感想・評価

4.4
米🇺🇸原題:『Casting By』


 「〇〇の役は違う人だったら良かったのに」とか「配役を変えて誰か撮り直してくんねーかなあ」などと、キャスティングさえマシだったら、、、と残念な気持ちになられたことはないだろうか?

常々、スクリプターとともに、キャスティングスタッフは過小評価を受けているなと苛立ちをおぼえていたのだけれど、このような作品が世に出てくれるのは喜ばしい。


 0:49:30 アル・パチーノ「信頼し助けてくれる人が必要だ」───
観る側の満足感だけでなく、演者達からもキャスティングによって救われたと口にする名優も多い。
「一生恩に着る」という言葉が浮かぶ。
言われた側はそれに見合った仕事をした、それを正当に評価すべき、という単純な主張が本作やキャスティングに関わる人々の骨子である。

現場の意見がかき消され、時代の潮流や短期即効性の利益に翻弄されるのはどこも一緒。
マリオン・ドハティが引きずり降ろされ、後任のワーナーブラザース・キャスティング部長に就任したのは、彼女の薫陶を受けてきたローラ・ケネディだったが、その苦悩はいかばかりだったか。

キャスティングの地位向上を阻む、テイラー・ハックフォードに代表されるような全米監督協会の横槍などクソだな、と個人的には感じる。


 イギリスの映画賞では、近年になって “BAFTA Award for Best Casting” というカテゴリーが追加されたが、アメリカでは第94回アカデミー賞が開催された2022年現在、キャスティングに関する賞は未だ無い。