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NOPE/ノープのBATIのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

映画創生の歴史において言及されなかった黒人を「いなかったことにはさせない」記録としての撮影。いなくなった者も記録されれば忘れられない。それがあのラスト。現時点でジョーダン・ピールの最高傑作。

ジョーダン・ピールの作品としては「ゲット・アウト」や「アス」と比べると黒人の被差別性、白人優位社会において物として消費される、影の存在として追いやられる構図は分かりやすい言及ではなく隠喩としてものになった。だが、これまで以上にメタではありつつ、歴史の中に確かに存在していた黒人たちの存在をなきものにがさせんという静かながら力強い筆致で描いた作品であった。そのテーマは映画内の血流として劇を画面を動かし、極めて映画的なクリシェとホイテ・ヴァン・ホイテマによる素晴らしい撮影、そもそもその画角ですら「視点」として機能させるなどメッセージだけが先行した前作よりもずっと作劇と融合しており、成功していたと思う。

もういろんなところで言われているから視線を送る≒自らも被写体であること、そこに無自覚な被差別下にいない(と思っている)人間たちの話はすっ飛ばすけど、何にせよ自分たちを見ようとしているモノが何なのか、見極めてやるといってカメラを方々に設置していく、視点を獲得しよようするところはジョン・カーペンターの「ゼイリブ」に連なるし、ジュープとゴーデイのハンズアップ(未遂)も「E.T.」よろしくではありつつも被差別下にあった者同士としてのゴーディからの一方通行な共感だったことも映画オタクへの目配せだけでなく単なるクリシェに収まっていないところも上手い。

何よりも後半のOJことダニエル・カルーヤが馬に乗り行動するところの映画という劇に歯車が重なり動く(そこでのマイケル・エイブルズのクラシカル・ハリウッドな最高のスコア!!!!)、まさに「運動」していることが素晴らしく、最後になればなるほどメタ的になっていくこの映画は設計通りにゴールがしているものの、テーマだけではなく映画が「動いて」いくことが誰もが感じられる造りと結果になっていたところがとても好きでした。

「見えない脅威」および後半の役者が揃っていくプロットはスピルバーグの「ジョーズ」だし、「Gジャン」が夥しい血液と肉を豪雨の中に撒き散らし、屋敷が真っ赤に染まっていくところは「悪魔の棲む家」を彷彿とさせましたね。シャマランの「サイン」そのままなキッズたちのおふざけエイリアンなどジャンル・ホラーの歴史をも見させる作りでとても楽しかったです。
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