ロシアのウクライナ侵攻後に付け刃的に作られた映画かと思っていたが、そうではなく侵攻直前に発表されたその後を予見するような作品だった。
砲撃が家を壊し、航空機が墜落し、人が撃ち殺されていく世界。そんなとんでもない世界のなかでも、主人公は家畜の世話をし、台所仕事をし、家を補修し、子を産む。戦闘状態のなかでの生活の営みに焦点が当てられた作品になっている。
作品の舞台自体は2014年のマレーシア航空機撃墜事件。「すべてが終わったら家にあいた穴に窓をはめる」と主人公は言うが、あれから9年たっても「引き裂かれた」暴力的な世界が続き、新たな戦争が起きているというのがつらい。
映画としては、夫婦のヴィジュアルが残念で、感情移入がしにくかった。別にとびきりの美男美女でなくていいのだが、魅力的な要素が欲しかった。