銀のしずく

ヴェルクマイスター・ハーモニーの銀のしずくのレビュー・感想・評価

5.0
始めのうちは話がさっぱり分からず眠かった。しかし映像は終始緊張感を漂わせ(この緊張感はどこから来るのだろう。モンタージュなど存在しないのに)、話も分からなさを含みながらもわかってきて、緊張感はどんどん高まって映画に没入してしまった。

 天体の調性と音楽の調性について描かれているから、自由、規律、暴動、抑圧といったテーマなのだろうとは思うが、それ以上のことは隠喩としてしか描かれない。以前にもこんなことがあったと町の人が言っているのは、1956年のハンガリー革命のことだろうか。病院の老人は何を表わしているのだろうか。わからない。わからないことばかりだが、わからないからこそ映像で表現する意味がある。そして唯一無二の物語でありながら、普遍性を持つことができる。

 長回しのことがもっぱら語られる作品だが、音が素晴らしい。映像は長回しとはいってもカメラ位置に動きがあるが、足音はそのあいだじゅうずっと続いている。それが怖い。