銀のしずく

極北の怪異/極北のナヌークの銀のしずくのレビュー・感想・評価

4.0
講演付きで鑑賞。1922年制作としては高い表現力があり、エンターテイメントとして楽しめる作品なのだが、いろいろやらせがある。

 出てくるのは本物の家族ではなく映画のために寄せ集められた人たち。妻役の女性は監督の「現地妻」で、子どもまで成したのに撮影後母子ともに捨てられた。狩りの方法は当時すでに廃れた古い方法で、イヌイットたちがときどきカメラの方を振り向くのは「早く銃で撃ってよ」と思っているから。縄の先にはアザラシなどおらず、スタッフが縄の反対側を持って引っぱっていたりする。蓄音機など既に知っており、知らないふりを演じているがそれがおかしくて、監督に真剣にやってくれと何度言われても笑いこけている。
 
 監督は人としてクズだが、やらせだと分かってなおさら面白くなるのは、映画としてよくできているのだと思う。ドキュメンタリーは始まりから嘘つきであり、そのことは問題も面白さも孕んでいる