耶馬英彦

ガール・ピクチャーの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

ガール・ピクチャー(2022年製作の映画)
3.5
 原題の通り、ミンミとエマとロンコの三人の女の子の物語である。5歳から15年というエマのキャリアからすると、三人とも20歳くらいか。学校に通っている二人は18歳かもしれない。
 80年代アメリカの青春映画みたいなテイストだが、スマホとインターネットのお蔭で知識だけは段違いに豊富だ。セックスについての知識も、20世紀とは比べ物にならないほど多い。それでもロンコは自分は人と違うのではないかと悩む。知識が増えても、個人の悩みは減らないのだ。
 ジェンダーフリーの時代らしく、恋愛はヘテロに限らない。ミンミはロンコと違って、ありのままの自分を受け入れる。それは他人に対しても同様で、ありのまま生きる母親のことも受け入れる。自由なミンミと不自由なロンコの対比が、本作品のポイントである。
 三人とも十人並みの容姿だが、率直で自分を誤魔化さないところに魅力がある。言ってみれば普通の女の子たちのどうでもいい日常を描いているだけで、流れる音楽は雑音にしか聞こえないのに、何故か飽きずに鑑賞できる理由がそこにあると思う。誰しも他人の本音を聞いてみたいのだ。
 ミンミはエマの15年の努力を無駄にさせたくない。「自分の反抗に他人を巻き込むな」という激しい口調に隠されたミンミの優しさにエマが気づくかどうか。ヤキモキしながら鑑賞できるのも、優れた青春群像劇の特徴だと思う。
耶馬英彦

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