熟睡

アイ・アム まきもとの熟睡のネタバレレビュー・内容・結末

アイ・アム まきもと(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ASDっぽい牧本さんの描写が、少々つくられたもの感があり、ずっと気になってしまった。
"こうなっちゃう"牧本さんの、"こうなっちゃわない"部分のバランスにリアリティが感じられない。

対人の会話では「わかりません」とはっきり言い、空気が読めない牧本さんが、なぜ故人にのみあそこまで心を尽くした行動をとれるのか。
自分を重ねたのだとしても、この映画の牧本さんがどういう思考になるのか、自分の理解ではあれらの行動にいまいちつながらなかった。

恐らく牧本さんの性質は未熟さによるものではないと思うのだけど、人との出会いで成長するものなのか…?そのきっかけは明確にどこかにあったのか。
わりと最後まで同じキャラのままだったので、転換点を読み取ることができなかった。

もとになった『おみおくりの作法』(2013)は、単に几帳面という設定らしい。牧本さんのキャラクターを変えたためにいろいろ気になってしまったのか。オリジナルの方も気になる。

最後の展開は宇崎竜童との対比にするためという意図が透けて見えてしまって、変にひねらずそのまま最後の仕事としてお見送りを遂げるラストでも、彼の仕事の尊さは描けたのではと思う。
(故人が集まり手を合わせるシーンに、序盤で出てきた故人の娘役の高田聖子がいたように見えたが気のせいか)

本題に入るまでがやや冗長だったので、牧本さん、塔子さんの心の動きをもう少し丁寧に見たかった。

俳優さんたちのお芝居はさすがの安定感。
満島ひかりが急にポロッと泣き出すところと、火葬を見送るシーンには思わず泣いてしまった。松下洸平はあんなに怒鳴らせる演出でなくてもよかったかな?
庄内地方の風景はとても美しく、スクリーンで見られてよかった。
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