矢吹健を称える会

かがみの孤城の矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.3
 わりと登校気味だったとはいえ不登校マインドを持っていた(持っている)者として、何度も落涙したが、しかし思った。これは、原作を読んだほうが、より心を動かされたはずだと。ただ、エンドクレジットの描写は映画オリジナルに違いない(描きようがないと思うので)。

 なにしろ近々のアニメ映画ときたら新海誠だのディズニー/ピクサーだの『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』だの、超絶手のこんだ作品ばかりだったので、本作の予告の画のショボさには、「おいおい大丈夫か」と思っていた。で実際見てみると、そんなに悪くはないんだけど、やっぱり地上波放映アニメ感は否めない。そもそも、動作がやたらとゆっくりしているのが気になるのだが、「オオカミ様」が登場してルールを説明するシーンなんか、狼のマスクを被っているので、口すら動かない。この画面の停止感はかなりすごい。

 「かがみの孤城」という舞台は、この物語のテーマに相応しい秀逸なものだと思ったのだが、それが「リオン」の姉の記憶と深く結びついているという描写も、どうかなと思った。この7人以外の子供を救いうる装置ではないってことにならないか。いや、他の場合はまた異なる形状・性質の装置が出現するのかもしれないけど。
 鍵を探すミッションに関する緊張感のなさがなかなか斬新で、『カラダ探し』みたいだなと思っていたら、ラストのオチも似ている。TVゲーム的感性なのか……しかしおじさんはこの手のオチでは常に萩尾望都『A-A'』やトニー・スコット『デジャヴ』のラストを思い出すため、常に不満たらたらおじになってしまうのだ。

 とまあ文句ばかり言ってきた(あと音楽・音響もちょっと……)が、老若男女問わず広く見られてほしいというのは偽らざる本音。誰もが、「こころ」のように理解のある親、身近なソーシャルワーカーに恵まれているわけではないのだから。