矢吹健を称える会

オッペンハイマーの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
 人類史上未曽有のスペクタクルを成立させた人物「オッペンハイマー」を、CGに頼らないスペクタクルに固執するクリストファー・ノーランが描く……という必然性はよくわかったし、トリニティ実験の爆炎を無音でとらえたシーンには息を呑んだ。ただ、私は仕方なしにシネマスコープ画角(トリミング版)を見たのだが、宙に昇る爆炎と横長の画面の相性が悪い気がする。
 また、終戦後のレッド・パージに関する描写がごちゃごちゃしており、時制を混乱させまくってまで描くほどの内容とはどうしても思えなかった。とにかく前半が本当に(演技の映し方といい、時系列の錯綜ぶりといい)無茶苦茶で、しかも結局このオッペンハイマーという人の功績が極めて漠然としたものにしか見えないのは、いかがなものか。まあ好意的に解釈すれば「チームリーダー」として優秀だったってことになるのだろうけど、それって逆に矮小化じゃないのか。ロバート・ダウニー・Jrの扱いも酷い。ラミ・マレックが突然ヒロイズムを発揮するのも、『ダークナイト』終盤でいきなり死刑囚がヒューマニズムに目覚める展開にも似た、とってつけたような感じ。っていうかそもそも会話が全然ダメだと思った。フローレンス・ピューとか馬鹿みたいなキャラ。
 あと誰もが気にする点だと思うが、音楽鳴りすぎ。