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シャイロックの子供たちのTSのレビュー・感想・評価

シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)
3.9
【金で狂っていく人々】83点
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監督:本木克英
製作国:日本
ジャンル:サスペンス
収録時間:122分
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 2023年劇場鑑賞7本目。
 池井戸潤の原作に主人公が阿部サダヲなんて面白くないわけがない。案の定、安定して面白い作品でした。過去に見てきた池井戸潤の映画作品には少し及ばないものの、やはり自分はこういう悪事を暴いていく現代の水戸黄門的な展開が好きなんだなと思いました。と言うか、多くの人はこういうシンプルな勧善懲悪モノは好きでしょう。ドラマ『半沢直樹』のブームがそれを物語っていたように思えますが。

 東京第一銀行のとある支店で、現金100万円が紛失するという事件が起きた。職員達は必死に探すも見つからない。そこで、西木がとった行動とは。。

 今作も十分類似作品と比べても面白いのですが、強いて言うとカタルシスが弱め。ただ、展開は読めるようで読めないものなので程よく面白く、またシリアスすぎないのが結果的に見やすくなっています。銀行用語が程々に出てくるので、僕もそんなに知っているわけではありませんが、そういうのが苦手な人が見たら嫌気が指すでしょう。そこで阿部サダヲの出番。彼が出ることによりややコメディさが増し、小難しい話もなんとなくノリで理解できてしまうという親切設定であります。

 ところで、今作のタイトルになっているシャイロックとは、かの『ヴェニスの商人』で出てくるユダヤ人の金貸しのことです。今作のテーマに金貸しという要素があるのですが、冒頭に佐々木蔵之介演じる黒田が言った「金は返せばいいってものじゃないんだよ」という言葉が印象的でした。金貸しから金を借りていけば人生はどんどん奈落の底へ落ちていきます。その場凌ぎで返せたとしても罪は罪。一生自分についてきます。金というのはやはり恐ろしいです。人を豊かにするが故に、すぐに人を狂わせてしまう麻薬ともいえる代物。金は天下の回りものとはよく言ったものです。

 橋爪功と柄本明は安定の配役。ん、でも柄本明は最近悪役のイメージ多いから今回は新鮮でしたね。そして主役の阿部サダヲがまた良い味を出しています。部下思いでなかなか頭の切れる男。無論、半沢直樹まではいきませんが、彼の行動力のお陰で、事件の真相がどんどん見えてくるようになってきます。

 確かに『七つの会議』のような印象深い描写などはありません。しかし、やはり安定して面白い。邦画は下手に金をかけて大作もどきのようなものを作るよりも、こういう職場などを舞台とした作品を作る方が面白いかと思います。さすがにここまできたら池井戸潤の原作も読まなくてはいけないか。。
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