JunichiOoya

私のはなし 部落のはなしのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

私のはなし 部落のはなし(2022年製作の映画)
5.0
満若勇咲さん(ご本名なのかしら? だとしたらとても素敵な名付け親に恵まれたんですね、羨望)はこう仰る。

「カメラに映らない。けれど確かにそこにあるものを、どのように映像で表現すれば良いのだろうか?
「はなし」を紡ぐことで、存在を感じさせる(→ここはちょっと編集しました)
そのために3時間25分という長さが必要だった。」

そうか、撮り手は確信犯だったんだ。そのせいか私の前に座った青年は(飽きちゃって)上映中に二度LINEに手を出しておりました。(どついたろか)
長尺(といっても200分ちょっとです)やクライマックスの無いこと、暗い映画館で他者と場を共有してスクリーンに対峙すること(等々)に不慣れなお客さんは辛い時間を過ごすことになるのかも…。

幻の過去作『にくのはなし』の挿入の仕方、そして「鳥取ループ」裁判との関連の付け方など、編集の流れには感心しました。

ナレーションの采(うね)奈菜子さんが、崇仁地区への移転を来年に控える京都市立芸大出身というのも良いなあ。

あと、北芝のほぼ隣町と言える牧落の高校生だった私には馴染みの話も多くて…。(但し70年代半ばの高校の授業に地域歴史が取り上げられた記憶はありませんが)

個人的には、黒川みどりさん。このところ続けて何冊か読んだり、先日は豊中市のまちづくり講座でオンライン講義を拝聴したタイミングだったんで、よりのめり込みました。

で、映画としては、満若さんの決意は決意として、やっぱり映像で語ってくれるところがもう少し欲しかったです。「はなしで紡ぐ」姿勢は支持します。でも、それぞれの話者を捉えるカメラにはもう少しアイデアがあって良かったと思うし、映画としての動きを出せる余地はもっとあったように感じました。

蛇足ですが、三重の人だと思う松村元樹さんは地名を読むのに「クダル」と読んでおられました。京の「下ル」はそうは読まないんじゃないかしら…。
JunichiOoya

JunichiOoya