ひとえにミー坊を演じるのんの演技力と存在感で成立している映画である。思いのほか幼少時の魚にまつわるエピソードも多く、子役も上手い。そして、のんが演じる高校時代からは一層軽快な運びとなる。欲を言えばもっとコメディタッチでスピーディーに畳みかけた方が映画としてのテンポも生まれたとも思う。しかし、監督は一人の若者が自分のありようや進路に悩みつつもさまざまな人との出会いを通して成長していくひとりの若者の姿を一番大切に描きたかったのかも知れない。館内には家族連れも多くいたが、幼い子どもたちはのんと登場人物たちとのドタバタのエピソードに笑い、大人たちはミー坊の葛藤と成長の姿にエールを送る。作品ごとに新たな才能を発揮するのんのこれからも大いに期待したい。
