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PERFECT DAYSのtakaのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
役所広司演じるトイレ清掃作業員の平山の日常が淡々と描かれていく。早朝、竹箒で道路を掃く音で目を覚まし、寝床の布団を手際よく畳み、歯を磨き、ヒゲを整え、顔を洗う…。着替えて家を出る時には優しく空を見上げる。自販機で缶コーヒーを買い、車に乗り、好きな音楽を流しながらトイレ清掃の場所へ向かう。一つひとつの便器を丁寧に拭きとっていく。仕事が終わると銭湯に入り、行きつけの居酒屋で焼酎のソーダ割と簡単なつまみを食べる。寝床では静かに古本屋で買った文庫の小説を読み、就寝する。平山はほとんど言葉を発しない。
こうした日々の中でのちょっとしたできごととの遭遇を彼なりに楽しむ。平山の背景が見え隠れする姪っ子とのやりとりがこの映画の中で一番のエピソードだが、ここでも多くを語らない。平山の過去はあくまで観客にゆだねている。それだけにラストシーンの平山の長いアップは、一貫して画面に映し出される木洩れ日のショットとあいまって人生の悲喜こもごもが観るものに迫ってくる。役所広司がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞をとったのも納得できる演技!
こうした日本的な演出に特化した作品を創り上げたヴェンダース監督にも感謝!
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