こなつ

さかなのこのこなつのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.0
お茶の間で知名度のある魚の研究者といえば、どこかの大学の博士ではなく、ハコフグ帽子と「ギョギョ!」という特徴的な語りをする「さかなクン」を思い出す人が殆どだと思う。

そんなさかなクンの自叙伝「さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生!」が原作の「さかなのこ」は、エピソードを部分的に借用し、独自のキャラクターで女優のんを主人公に沖田修一監督がメガフォンを取った。

のん(能年玲奈)と言えば、「じぇじぇじぇ」のフレーズで一大ムーブメントを巻き起こした2013年上半期の朝ドラ「あまちゃん」の主人公として、その当時一躍脚光を浴びた新人女優だった。「天間荘の三姉妹」は、劇場で鑑賞していたので、前からこの作品も観たかった。

心から好きなものがあるというのは何と素敵なことだろう。常識的には欠けている部分がたとえあっても、他の人には出来ない得意なことがあれば、必ず道は開ける。父親が何と言おうと、学校の先生が何と言おうと、ひたすら応援し続けた母親の姿が素敵だった。なかなか出来ることではない。

小学生のミー坊(のん)は魚が大好きで、寝ても覚めても魚のことばかり考えている。父親は周囲の子供とは少し違うことを心配するが、母親(井川遥)はそんなミー坊を温かく見守り、背中を押し続けた。町の不良達(柳楽優弥、磯村勇斗)すら彼女のペースに巻き込まれ、すっかり仲良くなってしまう。やがてひとり暮らしを始めたミー坊は、多くの出会いや再会を経験しながら、彼女だけが進むことができるただひとつの道に真っ直ぐに進んで行く。

「あまちゃん」以降、事務所のトラブルでなかなか活動が出来なかったのん(能年玲奈)だったが、10年経っても、独特な存在感と輝き、透き通った肌、キラキラした瞳は健在だ。

のんにしか演じられなかっただろうと思えるほど自然体で挑んだこの役で、アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。数日後に開催される授賞式で、久しぶりに彼女の晴れ姿を見れるのが嬉しい。
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