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映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使いのkasmiのレビュー・感想・評価

4.5
私が一番タイムリーに見たドラえもん映画であり、録画して何度も何度も見返した一番思い出深いドラえもん作品。間合いや声音まで覚えてるセリフがいくつもあったし、魔界の色合いや月の世界の質感も明確に覚えていた。子供の頃に繰り返し見た作品というのはここまでディティールを記憶しているものなんだな。

かなり複雑だし、場面数も使用するひみつ道具の数も多い。伏線回収も見事。最後の最後まで内容が濃密。そしてダークな世界観。やっぱりめちゃくちゃ面白い作品!
もしもボックスは壊れるし、ジャイアンもスネ夫もしずかちゃんもみんな敵に捕まって、食べられる寸前まで追い詰められるし、必殺技が敵に効かないし、ここまで絶望感があるドラえもんは珍しい。
「月が、真っ赤だ。」「だれも、こない。」「みんな、捕まっちゃったんだ。」この間合いと絶望感が忘れられない。
タイムマシンを使って過去改変を試みたり、ドラミの道具を使ったり、反則技みたいなこともするのにうまくいかない。
タイムマシンの中まで追いかけてくるメドゥーサも、自分の形をした石像もとても不気味。
パラレルワールドの魔法世界を置き去りにして自分たちだけ元の世界に帰ることだってできるのだ、という選択肢が提示されるのは本当に怖かった覚えがある。「もしもみんなを見殺しにしたら、、」という想像を暗に掻き立てるからだ。

そんな恐ろしさの中での美代子さんとお母さんのシーンは本当に泣かされる。美代子さんも勇敢で可愛らしくてとてもいいキャラクター。美代子さん登場シーンのテーマ曲みたいなのがあるんだけど、これがまたものすごく泣ける曲なのだ。涙をにじませながら(猫の姿で)闘う美代子さんの背中を見送るシーン大好きだったな。
魔法の絨毯の中の部屋でしずかちゃんの髪をとかす美代子さんのシーンも、エンドロール後の花冠のシーンもめちゃくちゃ好き。ちょっと全体的に美代子さんとしずかちゃんの女の子が強調されすぎているというのは確かにそう思う、時代的にギリギリだと思うが、その結果どうなっているかというとジブリの女の子っぽくなっているのだ、つまりそういうことなのだと思う。

それにしても今作でのび太が共に冒険したのは同じ世界線のジャイアンやしずかちゃんじゃなかったのだな、ということに今更気がつき、少しびっくりしている。
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