てっぺい

線は、僕を描くのてっぺいのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
4.0
【描く映画】
描かれる美しい水墨画の数々。その魅力に圧倒されつつ、通して描かれるのは生きる事の本質。数々の名言と心躍るBGM、そして役者のみなぎる演技力も相まって、映画を通して自然と感性が研ぎ澄まされ、磨かれるような一本。

◆トリビア
〇横浜流星は、コンビニの袋をバッグ代わりに現場にくる。(https://www.fnn.jp/articles/-/423397)
○横浜流星は俳優になりたての頃、小泉監督の代表作「ちはやふる」のオーディションで落選。半年仕事がなかった。(https://cinemagene.com/post-52886/)
○ 横浜流星は出演が決まってからの2年間、水墨画を練習。ほとんどの描画シーンはプロの絵師の代役を立てず、彼自身が描いている。(https://cinemarche.net/interview/senboku-koizuminorihiro/)
〇横浜流星と清原果耶は『愛唄 -約束のナクヒト-』以来の共演で、共に藤井道人監督作品の常連。作品に対してのストイックさはお互い似ていると感じている。(https://www.banger.jp/movie/84981/)
○清原果耶は本作が「おかえりモネ」直後の仕事。監督から本作での“ヒロイン感”のオーダーがあり、タイプの違うその解釈に苦労した。(https://times.abema.tv/articles/-/10043634)
○2022年9月のTGCで横浜流星と清原果耶が水墨画のライブペイントを披露。横浜は竹を、清原は梅を描いた。(https://www.excite.co.jp/news/article/FujitvView_2499e9fa_02ba_4216_bcd8_c527294a3b61/)
〇清原果耶は本作のインタビューでのめり込んでいる事を聞かれ、ボルダリングにハマっている事を明かした。(https://www.fnn.jp/articles/-/423397)
〇原作者の砥上裕將は、自身が現役の水墨画家。(https://senboku-movie.jp/aboutthemovie/productionnote.html)
○東京都目黒区のホテル雅叙園東京では、本作とのタイアップ企画として、劇中に登場する水墨画やアトリエ風景を展示している。(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000103.000041601.html)
〇主なロケ地となった滋賀県は、ロケ地詳細マップやキャンペーン情報が掲載された公式サイトを公開している。(https://shiga-senboku.jp/#)
〇小泉監督にとっては「ちはやふる」3部作に続き、4作連続での滋賀での撮影となった。(https://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20221018-OYTNT50024/)
○本作は東京ガールズコレクション初の公式応援映画になった。(https://tgc.girlswalker.com/22aw/news-archives/18501/)

◆概要
『ちはやふる』を青春映画の金字塔に仕立て上げた小泉徳宏監督と製作チームが再結集し「水墨画」に挑戦。
【原作】
砥上裕將「線は、僕を描く」
【監督】
「ちはやふる」小泉徳宏
【出演】
横浜流星、清原果耶、細田佳央太、河合優実、矢島健一、夙川アトム、井上想良、三浦友和、江口洋介、富田靖子
【公開】2022年10月21日
【上映時間】106分
【主題歌】yama「くびったけ」(Vaundy作詞作曲)

◆ストーリー
大学生の青山霜介はアルバイト先の絵画展設営現場で水墨画と運命的な出会いを果たす。白と黒のみで表現された水墨画は霜介の前に色鮮やかに広がり、家族を不慮の事故で失ったことで深い喪失感を抱えていた彼の世界は一変する。巨匠・篠田湖山に声を掛けられて水墨画を学ぶことになった霜介は、初めての世界に戸惑いながらも魅了されていく。


◆以下ネタバレ


◆喪失と再生
霜介の涙から始まる冒頭、そしてその訳が次第に明かされていく。先輩から同志へ、そして絶妙な距離感でかけがえのない存在となった千瑛が同行し、二人で過去を乗り越えるラストが何よりも美しい。“生きていれば妹と同じくらいの歳”な千瑛も思えばスランプを抱えている存在で、二人で乗り越えた先に霜介が描いた二輪の椿はまるで彼らそのもののよう。湖山の教えの通り、“本質”を見て、“生きる力”をみなぎらせ、まさに自らの線で自らを描き、切り開いた二人が眩しかった。

◆水墨画
冒頭湖山が描いた鳳凰、中盤西濱が描いた龍のそれぞれの荘厳さは鳥肌もの。ダイナミックで大胆に筆が躍り、心躍るBGMや役者の生き生きとした眼の演技と相まって、完成した俯瞰の画はいつまでも見ていたいほど。逆に霜介が練習を重ねた春蘭や、千瑛が見せた四君子は繊細で、“シュッ”という筆の音が際立つ。筆に3種の濃度の墨を染み込ませる技術的な面も含めて、水墨画の奥深さが伝わってくる。霜介の椿や菊の絵も含めて、作品を一点一点じっくり眺めたくなったし、この映画を見た誰しもが水墨画をやってみたくなるのでは。

◆演技力
自らの提案でリハーサルも含めて一切絵を見ず、本番で初めて見たあの椿の絵に、涙を滲ませる表情を見せたという横浜流星(https://cinema.ne.jp/article/detail/50403?page=1)。映画としてもファーストカットで、本作を通して非常に意味のあるシーンが十分にインパクトあり。湖山に“おかえり”と言われ戸惑いながらもホッとする清原果耶の何気ない表情作りもよかった。そして江口洋介。“本質”を捉える事のヒントを霜介に投げかける重要な役回りで、どこか飄々としつつ芯のあるキャラクターを十分に演じきっていたし、龍を描く時の湧き出る感性を見せたあの表情がとんでもなく素晴らしかった。

◆名言
湖峰の“何かになろうとするのではなく、変わっていくもの”、湖山の“できるできないじゃなく、やるかやらないかだ”。節々で心に残る名言を残すのも印象的。水墨画の映画ながら、“本質”を見る、万人に共通する普遍的なテーマを描いた本作。言葉の一つ一つや、演技力に絵の力、音も含めて映画全体が五感に響く、感性を自然と磨かれるような一本でした。

◆関連作品
○「ちはやふる」('16)
上の句、下の句の2作品完結。小泉徳宏監督作品。広瀬すずの白目が印象的な笑、青春映画。プライムビデオレンタル可。
〇「ちはやふる-結び-」('18)
シリーズ完結作で、小泉徳宏監督、清原果耶出演作品。清原果耶が大筆書道をする場面があります。プライムビデオレンタル可。
○「愛唄 -約束のナクヒト-」('19)
横浜流星、清原果耶出演作品。二人の儚い演技が見どころ。プライムビデオ配信中。

◆評価(2022年10月21日現在)
Filmarks:★×3.9
Yahoo!映画:★×3.7
映画.com:★×3.2

引用元
https://eiga.com/amp/movie/96862/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/線は、僕を描く
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