てっぺい

四月になれば彼女はのてっぺいのレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
3.5
【絶景映画】
喪失と再生の物語。世界の絶景の数々が、出演陣の熱演はもちろん、物語の構成でよりキラキラ目に焼き付く。劇中で問われる“愛を終わらせない方法”に、じわりと心が温まる。

◆トリビア
〇藤代を演じるうえで、何かを表現しようとするのではなく、感じたままその場にいたいと思っていたという佐藤健。「過去の回想シーンも合わせて10年ぐらいの月日を演じているんですけど、何も考えなくとも、相手が違うだけで自分の演技も変わってくる体験は初めてで、興味深かったです」と語る。(https://natalie.mu/eiga/news/564071)
○佐藤は「藤代の熱くなりきれないところや必死になりきれない部分に、非常に共感できました。僕自身、もがいている自分を見せたくないし、熱くなること自体を避けてしまうところがありますから。きっと誰もが経験している事なんじゃないかな」と、自身と藤代の共通点を語った。(https://baila.hpplus.jp/lifestyle/entertainment/61832)
○監督曰く、佐藤は脚本会議から参加。「原作の藤代はいい意味で情報量が少なく、演じるのはとても難しい人物です。そんな藤代の微妙な情感をどう見せるか。佐藤さんとは、会議でも現場でも、とても繊細なやり取りをさせてもらいました」(https://article.auone.jp/detail/1/5/9/136_9_r_20240322_1711059172395968)
〇脚本上では「洗面台の前で、鏡に映った自分と向き合って泣く」と書かれていたシーン。現場で佐藤が「自分よりも、2人の思い出が詰まったものを見る方が心が動く」と変更を提案。それが本作全体のキーになったグラスだったという。(https://www.cinemacafe.net/article/2024/03/20/90670_3.html)
〇佐藤健と森七菜の回想シーンの多くは、設定だけを与えられたアドリブ。佐藤は「ドギマギするほど緊張しながらも、初めて本気で人を好きになったことが嬉しいみたいな、キラキラを表現したいと思いました」と話す。(https://baila.hpplus.jp/lifestyle/entertainment/61832)
〇森は、21日間で10か国の過酷な移動ロケを経験。海外での仕事は人生初で「この役に選んでもらった恩返しをしたいと心を奮い立たせました」と話す。心身ともに疲れた時には、実家の母親と国際電話で話してリフレッシュしたという。(https://hochi.news/articles/20240320-OHT1T51270.html)
○ 本作で使用されている藤代のビジュアルは森七菜本人がカメラで撮影したもの。(https://www.fashion-press.net/news/102966)
○ 藤代が走って弥生を呼び止めるシーンでは、台本には記載がなかったものの、振り返った長澤まさみが泣きだしていたという佐藤。「アドリブで長澤さんを抱きしめたんです。あそこは印象的でした。シンプルに相手と向き合えば、感じるものがある。恋愛はもちろんお芝居だって、誰といるかで変わっていくことを感じました」(https://baila.hpplus.jp/lifestyle/entertainment/61832)
〇長澤まさみは、演じた弥生について「気持ちの赴くままに行動するようなところがあって、実は役作りには悩みました。結局、役の『芯』のようなものを用意せずに撮影に入り、演じながら手探りで見つけました」と明かす。その迷いは、弥生の迷いの表現につながり、結果的には良かったと考えているという。
(https://www.sankei.com/article/20240322-K36XMRO74FMO7AGSTH5ZPANSTE/)
〇森七菜は長澤まさみについて「誠実さの塊」だと話す。スケジュールをわざわざ確認して地方ロケに酵素玄米をパッキングして持ってきてくれたといい、「現場の人への誠意が半端じゃない。こんな先輩の背中を見て、成長していきたい」と語る。(https://hochi.news/articles/20240320-OHT1T51270.html)
○主題歌を担当した藤井風は、物語の空気感にインスパイアされ、教会で曲を書いたという。「どういう音楽が鳴ったら、この物語の邪魔をしないだろうか。それを考えながらピアノに向かいました」と語り、本編観賞後に体感した感覚をそのまま楽曲制作に活かしたことを明かした。(https://s.cinemacafe.net/article/2024/03/18/90632.html)
○ 原作者の川村元気は、結婚とは日食のように一度は気持ちが重なりできるもの、だがそこにいつしか生じるズレと、人はどう向き合っていくべきなのかをずっと考えていたという。「それが「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」という問いでした。その答えをみつけたかったんです。」(https://otona-poripori.com/contents/osusume/vol_05.html)
○タイトルの「4月になれば彼女は」は、サイモン&ガーファンクルによる楽曲「April come she will」の訳語。原作ではその曲を歌う様子も描かれている。(https://cesa-cesa-happy.com/映画『四月になれば彼女は』ロケ)

◆概要
【原作】
川村元気「四月になれば彼女は」(発行部数45万部超)
【監督】
山田智和(米津玄師「Lemon」などのミュージックビデオの演出を手がけてきた人物。本作で長編デビュー)
【出演】
佐藤健、長澤まさみ、森七菜、仲野太賀、中島歩、河合優実、ともさかりえ、竹野内豊
【音楽】
「スワロウテイル」小林武史
【主題歌】
藤井風「満ちてゆく」
【撮影監督】
「余命10年」今村圭佑
【公開】2024年3月22日

◆ストーリー
精神科医の藤代俊のもとに、かつての恋人である伊予田春から手紙が届く。「天空の鏡」と呼ばれるボリビアのウユニ塩湖から出されたその手紙には、10年前の初恋の記憶がつづられていた。その後も春は、プラハやアイスランドなど世界各地から手紙を送ってくる。その一方で藤代は現在の恋人・坂本弥生との結婚の準備を進めていたが、ある日突然、弥生は姿を消してしまう。春はなぜ手紙を送ってきたのか、そして弥生はどこへ消えたのか、ふたつの謎はやがてつながっていく。


◆以下ネタバレ


◆喪失と再生
ウユニ塩湖を行く春の姿で始まる冒頭。その美しさに息を呑むとともに、春がなぜそこにいるのかが本作のキーとなる事がここに記される。それは、10年前のまっすぐだった頃の自分に出会うため。劇中に何度も登場した“あの頃の私には自分より大切な人がいた”という言葉の通り、喪失した心の片隅にあったものを埋めるため、身を犠牲にしても旅を続けた春。その姿に重なるように、藤代も弥生という喪失から、“愛を終わらせない方法”を探すように、通して自分探しを続ける。弥生も、“あの頃の私には自分より大切な人がいた”の言葉に、再生への手がかりを追うように春のもとへ向かう。本作は、藤代にとっても春にとっても、そして弥生にとっても、喪失と再生の物語というキーワードで共通していた。

◆ロードムービー
冒頭で記された通り、世界の絶景を行くロードムービー的な側面もあった本作。ウユニ塩湖のスクリーンいっぱいに広がる白と青の世界が美しすぎたし、“過去と現在が交差する”チェコ・プラハの時計台も本作にぴったり。ブラックサンドビーチはまさに黒い砂と打ち寄せる波の白のコントラストが美しい。そもそもその絶景は、あのキラキラした学生時代の藤代と春が夢見て、そして叶わなかった約束。そのフィルターを通して、やはりキラキラする絶景がまるで当時の2人にも重なるよう。雑観として時折り差し込まれた美しい景色が、本作では心の純粋さやまっすぐさに重ねて描写されているように思えた。

◆ラスト
結婚式を葬式に例えた弥生の気持ちに気づくこともなく、割れたワイングラスが2人の思い出だったことも忘れていた藤代。自分を見つめ直し続け、たどり着いた弥生の写真は、まるで春が藤代を導くよう(あの写真で弥生と春が繋がり、一気に物語が加速する構成も素晴らしい)。海で見つけた弥生に全速力で駆け寄る姿は、動物園で駆け寄ったあの頃の、つまり愛に満ちていた藤代そのもの。動物の豆知識が話せるほど弥生に寄り添えるようになった姿は、まさに藤代自身、喪失から再生していた。春とあの高台へ撮影しに行った朝日は、ラストでは夕陽の光として弥生に柔らかく注がれていたのも印象的だった。

◆関連作品
○「世界から猫が消えたなら」('16)
本作同様川村元気原作、佐藤健主演作品。プライムビデオ配信中。
○「億男」('18)
川村元気原作、佐藤健主演。プライムビデオ配信中。
○「青と僕」('18)
山田智和が監督したドラマシリーズ。親友の死をめぐる青春ミステリー。全6話FOD配信中。

◆評価(2024年3月22日時点)
Filmarks:★×3.7
Yahoo!検索:★×3.4
映画.com:★×3.5

引用元
https://eiga.com/movie/99395/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/四月になれば彼女は
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