こなつ

線は、僕を描くのこなつのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
4.0
砥上裕將による小説を「ちはやふる」の小泉徳宏監督で映画化された作品。

作品の中には数々の名言があり、そのひとつひとつの言葉が、自分にとって今まで未知の世界だった水墨画というものの印象を大きく変えた気がする。

物語は、家族を不慮の事故で失ったことで深い喪失感を抱えていた大学生青山霜介が、水墨画と運命的な出会いをすることによって、成長し、再生して行くというもの。

水墨画の巨匠、篠田湖山を演じた三浦友和の風貌は、どこから見ても湖山そのものであり、話し方、歩き方、全てが自然体で魅力的だった。

豪傑だけど温かい西濱湖峰を演じた江口洋介が龍を描く時に見せた水墨画への情熱、その眼差しに心震えた。

湖山の孫で霜介をライバル視する清原果耶の凛とした美しさ。水墨画と向き合う真摯な姿勢、その佇まいは本物。

そして主人公の青山霜介を演じた横浜流星の和の演技。ビジュアルだけでない、心で演じる姿に感動した。

兎に角、俳優人の名演技が、未知の世界である水墨画というものをより魅力的に表現していて、素晴らしかった。

「できるできないじゃなく、やるかやらないか」湖山

「何かになろうとするのではなく、変わっていくもの」湖峰

「水墨というのは森羅万象、この世に存在する一切のものを描く、だから命を見なさい」

水墨画の美しさ、数々の名言に触れ、魅了された霜介と同じ気持ちになって、真っ白い紙に無限の可能性を感じながら最後まで食い入るように鑑賞できた。

美しくもあり、切なくもあり、自然と涙する感動作。
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