回想シーンでご飯3杯いける

線は、僕を描くの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

線は、僕を描く(2022年製作の映画)
2.0
水墨画によるエンドロールが素晴らしいだけに、どうしてそれを本編で描かったなかったのか、不思議で仕方が無い。

とある不幸な経験から、将来の進路を決める事を躊躇っていた大学生(横浜流星)が、水墨画の名人(三浦友和)に出会う事で自分を見つめ直すというストーリー。冒頭の三浦友和による水墨画のパフォーマンス等は、あまり映画で取り上げられない水墨画の世界を見られる映画として面白そうに思えたのだが、、、。

中盤以降、それまで特に掘り下げられていなかった登場人物による名言が次から次へと登場して、自分が寝落ちしてシーンを飛ばしてしまったのかと思った。

チャラ男だった同級生が急に人生を語り始めたり、一門の料理番程度の扱いだった江口洋介が突然水墨画の才能を披露したり、三浦友和と孫役の清原果耶の確執も、ライバルと思われる富田靖子との確執も、サクッと説明台詞で済ませる程度から、いきなり重要なシーンに入り込んでくる。

本作のように芸術を題材にした映画は、まずその題材の部分でしっかりメッセージを伝えないと駄目だと思う。それを説明台詞で済ます。しかも、顔の知られた俳優ばかりなので、事前に水墨画の特訓を受けていたとしても、どうしても「有名タレントが頑張っている」という風にしか見えず、作品世界に没入できない。敢えて無名の俳優をキャスティングして、仕草や表情で心理を描き出すような要素を入れて欲しかった。

原作は小説との事なので、映画化に際して、重要な台詞だけを切り取って作ったのかもしれない。