矢吹健を称える会

犯罪都市 THE ROUNDUPの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

犯罪都市 THE ROUNDUP(2022年製作の映画)
3.6
 マ・ドンソク史上最強と思われる。一発一発の「重さ」の演出、そして的確なアクションの捉え方が素晴らしい。それが「射程に入ったら絶対に勝つ」という圧倒的信頼感を生んでいる。
 問題はその「射程」の狭さだが、まあ拳銃が存在しないことでおなじみの韓国なので対戦時のリーチの差はさほどスリルを生まない。むしろ、その絶対勝つ射程にどう相手をひきずりこむか。その駆け引きが金銭を磁場として行われる中盤以降がスリリングで、さすが韓国映画は力があるよなあと思った。初登場時は大したキャラとも思えないパク・ジヨンの電話シーンなんてすごく良い。こういうシーンひとつで、面白さって格段に増すと思う。
 クライマックスは『ミスター・ノーバディ』を思い出したが、もちろんこちらのほうが格段に迫力がある。窓から飛び出したあいつを、引きずり戻そうとするのは笑った。それと、フィリピンから来た双子の片方をボコるシーンは、エスカレーターの使い方が冴えている。これは増村保造『からっ風野郎』以来のエスカレーター描写だ。

 ただ、パンチ・キック・投げが死ぬほど痛そうな一方、本当の致命傷は画面にほぼ映さないという謎の配慮が感じられ、結構奇妙なバランスだと思った。
 あと、画面が暗いんですよね。なんだろ。上映環境が悪いのかな。それにコミカル演技が楽しいところもあるけど、結構間延びして感じる箇所もある。まあでも、こち亀みたいなもんで、こんな感じでじゃんじゃん作っちゃえばいいじゃん続編を。