真田ピロシキ

劇場版 Gのレコンギスタ IV 激闘に叫ぶ愛の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.2
TVシリーズと今までの劇場版3作は試運転に過ぎなかった。気が散りがちの自分が最初から最後まで画面に釘付けっぱなし。

クレッセントシップで地球圏に高度技術を授ける金星圏のビーナスグロゥブに向かうメガファウナ一行を出迎えたのはレコンギスタ主義者ジット団。もう記憶が曖昧なTV版では隊長のキアが自ら開けた海の大穴を命を挺して塞いだ姿が印象に残っていたが、改めて見ると「地球人はすぐ戦争したがる」と言いながらお前らにだけは言われたくねーよと言いたくなる野蛮人そのもの。自分達のホームに向けて発砲するわ同胞も警告なしで撃つわでまるで好意的に見れるところがなくて、キアの最期も自業自得だクソバーカとしか思わない。この重要施設の近くでも構わず戦う野蛮さは後のカシーバミコシ攻防戦にもあって、現実にロシアがチェルノブイリを攻撃した今では恐ろしいリアリティ。アニメじゃない本当のことなんだ。また、TV版より増えてたアメリアとキャピタルアーミーの大部隊を一瞬にして消滅させる大量破壊兵器フォトントルピードの威力も一向に核軍縮が進まないどころか逆行すらしている現実を思わせて、ベルリ同様に恐怖する。富野監督は御年80歳でマジに警鐘を与えんとしている。月サイズの施設を有しある意味では本当のニュータイプと言えるミュータントのムタチオンが存在し、ゆくゆくは地球をそのまま動かそうという計画まで持っているビーナスグロゥブですら破壊の技術から逃れられていないのは人類の業。でもこのフォトントルピードですら月光蝶に比べればまだ大人しいんだよな。月光蝶をある程度解析した産物なのだろうか。

Gレコお馴染みSF世界のリアリティ演出は冒頭での金星圏の環境に慣れるためのトレーニングや宇宙空間での距離感把握など。この中であった実際に見てみないといけないというのは、何でもネットで分かった気になれる昨今に刺さる。それでいながら言葉でくどくど語らないので変に説教臭くはならないのがスマートなところ。Gレコはとかく分かりにくいと言われるが、あまり分かりやすくし過ぎたらダメなところはあるのだ。

多くの人の死をその身に感じ取り、マスクに「この人殺しが!」と追い立てられるベルリの姿はZ的。TVではあんまりすぎたマニィに何とか好感を持たせようとしてたがやっぱりアイツは好かんね。「僕はマスクに人殺しと言われながら追われてすごく怖かったんだぞ!」というベルリの言葉に同情する他ない。それでも明るい未来を信じさせたがるのが∀以来の富野作品の良さ。

散々破壊兵器の恐ろしさを描いておきながら圧倒的な新作画の数々でMS戦を魅せてくれるのが罪作り。特にクライマックスのGセルフとマックナイフ戦は描き込みが極まっていて目が離せない。マックナイフでこれなら次に控えるGレコ最高機体であるユグドラシルのテンダービームはどうなっちまうんだ?ビーム要員は本気のガイトラッシュも控えている。最終章への期待は膨れ上がるばかり。

そういやサブタイトルが指してるものですが、キアとクン・スーンにマスクとマニィは分かるとして、あとはベルリとアイーダの姉弟愛?そう思ってたらケルベス中尉がアイーダ姫様意識してるっぽい雰囲気でこんなのTVにもあったっけ?TVは話について行くだけで精一杯だったので分からん。