こなつ

ザリガニの鳴くところのこなつのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.0
全世界1,500万部突破のミステリー。2019年2020年アメリカで最も売れた本。動物学者ディーリア・オーエンスによるミステリー小説の映画化。

ザリガニの鳴くところってどこなのだろう?ザリガニって鳴くの?一風変わったタイトルが興味を引く。

なぜこの作品がこれ程までに全米の人々の心を掴んだのか、、原作を読んでからと思っていたが、途中のままの映画鑑賞となった。

マングローブに覆われているという暗いイメージの湿地帯だったが、スクリーンに映し出されるのは緑広がる湿地帯の美しい風景、明るい日差し。オープニング映像から心惹かれていく。入念にロケ地を選んだというだけあって、素晴らしいロケーション。

気候変動や生物多様性のカギと言われる湿地帯、自然が常に人間の思惑を超えるのと一緒で、この作品もまた衝撃的な結末が待っていた。

1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で裕福な家庭に育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、「ザリガニが鳴くところ」と言われる湿地帯でたったひとり育った無垢な少女カイア。6歳で家族に見捨てられ、学校にも通わず、湿地の自然から生きる術を学び、必死に生き延びてきた。

彼女は本当に青年チェイスを殺したのか?チェイスは誤って転落したのか?裁判を通して、彼女の壮絶な半生が明らかになっていく。

新星デイジー・ニドガーが、美しいが、どこか暗く神秘的なカイアを好演。傷ついて大きな孤独を抱えているカイアの姿を丁寧に描いている。

湿地の娘と蔑む街の人々の冷たい視線、初めて恋した青年テイトとの出会いと別れ、それでもカイアは何かと気にかけてくれる黒人夫妻の助けを借りながら、逞しく生きていった。

兄が家を去る時残した母の口癖だったという言葉「父に暴力を振るわれそうになったら、ザリガニの鳴くところへ逃げろ」それは大自然のずっと奥深い、人の目につかない自分を守ってくれる場所を意味するのだろうか?

ノートに挟まれていたネックレス、やっぱりそうだったのかと思う衝撃の結末は、説明もなく、きちんと納得できる形ではなかったように感じたが、そのような終わり方がまた深い余韻を残したようにも思う。

エンドロールで流れた主題歌「carolina」。
シンガーソングライターのテイラー・スウィフトの書き下ろした楽曲の物悲しい歌声と歌詞の素晴らしさ、すぐには席を立てないほどの感動が心を満たした良い作品だった。
こなつ

こなつ