真田ピロシキ

恋する惑星 4Kレストア版の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

恋する惑星 4Kレストア版(1994年製作の映画)
5.0
フェイ・ウォンだけで1億点!恋愛映画を好んで見る方ではないのだけれど、いくつかお気に入りはあってその中でもトップクラスに好きなのが若い頃にVHSで見たこれ。

本作を初めて見たのは多分高校生くらいで、塚本晋也監督の『鉄男』に刺激を受けたように一風変わった映画を見て映像表現というのを意識しはじめた頃だったので、恋愛の機微が分からなくても本作を貫くウォン・カーウァイの映像スタイルに触れるだけで楽しめた。金城武が主人公の前半部はそんな映像美を堪能できて、5年付き合った彼女にフラれた警官の傷心模様に町の喧騒や突然の裏社会バイオレンスが闖入するカオスにあと数年で中国返還寸前の香港を何となく感じ取れる。ジュークボックス、パイン缶、どしゃ降りの雨にジョギング、ポケベル。詩的な空気に包まれる。

そして本命は後半のフェイ・ウォン。その宇宙的キュートさ!彼女に釘付けでトニー・レオンはたまに目に入る存在でしかない。表情だけではなく、身振り手振りに声といった全身で魅力を体現するのはアジアの歌姫の貫禄。ファッションも可愛すぎんでしょ。作業中の白Tシャツ姿ですらクッソ萌えなのに色んな格好を見せてくださいまして。彼女の行動は客観的に見るとただの不法侵入女なのだけど、633番の部屋で無断模様替えしてはしゃぐハジけっぷりを見ると若い時のドキドキがそのまま蘇ってスクリーンの彼女に恋をするしかない。それを彩る劇中曲 夢中人と夢のカリフォルニア。まさに観客を恋する惑星に連れていく魔法の映画。これは至福の時。映画館で見れて最高だ。