恋に搭乗し、恋に飛行する。
WKW作品は3作目。その中では、一番好きかもしれない。
本作のプロットは刹那的で、不連続的で、不親切だ。2組の恋は唐突に連結されるし、恋の物語も典型から悉く外れる。
しかし、いやだからこそ、彼らと彼らの間に起きている現象は、僕の心を掴んで離さなかった。好きな男の家に忍び込んで勝手に家を改造するときの彼女の“飛行”は、映画史に残る自由な時間と言えよう。
雑多な人種、雑多な言語、雑多な職種が入り混じり、熱気が蒸れる20世紀末の香港と、それを彩る鮮やかな音楽。この100分を、僕は忘れない。
それにしても、映画のプロットってこんなにも自由でいいんだね。恋愛映画なのに付き合わないどころか、デートもしない。航空機というテーマを象徴的に引っ張り続けながら、圧倒的技巧で引き込み続ける。映像美術の極致だね。恐れ入った。