真田ピロシキ

天使の涙 4Kレストア版の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

天使の涙 4Kレストア版(1995年製作の映画)
3.5
『恋する惑星』で削ったエピソードを元にしているらしい。なので『恋する惑星』の補完作と言うかリブートのような印象すら受けて、ノワールなガンアクションのバイオレンスや揺らめく紫炎、ストーキングな危ない女のラブ、手持ちカメラで捉えられた躍動感溢れる町の喧騒、疾走するカメラ、水に濡れる女のエロティックに極め付けは金城武と賞味期限切れのパイン缶の組み合わせと様々なモチーフが重なる。音楽も似ているが、歌謡曲風のメロディの主張が強いのは印象的なところ。

なのでなかなか楽しめはしたのだが、致命的なのはフェイ・ウォンの不在。『恋する惑星』を唯一無二にしているのはフェイ・ウォンの宇宙的魅力がカーウァイ独自の映像スタイルと爆発的化学反応を起こしているからなので、彼女抜きではどうしてもパワーダウン、悪く言うと二番煎じを感じてしまった。想い人の部屋で自慰行為をするエージェント(ミシェル・リー)の方がヤバさは上なのだけれどそれほど思うところはなくて。人の話を聞かない自分の想いに一直線な失恋女(チャーリー・ヤン)の方がハートにビビッとくるところがある。最後の姿が前作のフェイ・ウォンっぽいしね。『恋する惑星』を引きずりすぎたのが不運な鑑賞となった。