MasaichiYaguchi

哭悲/The SadnessのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
3.8
コロナ禍における社会がもし暴走してしまったらという最悪な“仮定”で描く本作は、台湾で感染拡大していた謎のウイルスが突然変異を起こして人々を狂暴化させ、地獄絵図を繰り広げさせていて心底震え上がらせる。
謎の感染症が蔓延した台湾、専門家たちに“アルヴィン”と名付けられたそのウイルスは風邪のような軽微な症状しか出ない為、人々の警戒心はいつしか解けてしまっていた。
或る日、ウイルスが突然変異して人の脳に作用して凶暴化させていく。
感染者たちは罪悪感に涙を流しながらも、衝動を抑えられず思いつく限りの残虐な行為を行い、街は殺人と拷問で溢れかえってしまう。
そんな暴力に支配された世界で離ればなれとなった恋人たち、カイティンとジュンジョーは生きて再会を果たそうと奮闘し始める。
感染者の殺意から辛うじて逃れ、数少ない生き残りと病院に立て籠もるカイティン、彼女からの連絡を受け取ったジュンジョーは、単独で狂気の街でサバイバルし始める。
監督・脚本・編集を務めたのは本作が長編デビューとなるロブ・ジャバズ。
大のホラー映画好きでもある監督は、様々な名作ホラーからインスピレーションを得て、パンデミックを経験した後の世界で目を背けたくなるような暴力が横行するという、決して絵空事とは言い切れない衝撃的な映画を創り上げたかったとのこと。
そして「最大の特徴は、突き抜けた残虐行為や聞くに堪えない言葉の数々。」と監督が本作について述べているように、半端ない描写で観る者を底無しの地獄に突き落としていく。
決して後味の良い映画ではないが、多くの人が作品の持つ突き抜けた描写や感覚に病み付きになりそうな気がする。