ルーマニアの俊英クリスティアン・ムンジウが近年のヨーロッパ映画頻出テーマである移民問題を取り上げたドラマ。
トランシルヴァニアの小さな村で人手不足に悩むパン工場がスリランカ人労働者を雇ったことから、地元民の排他的な感情を呼び起こしてしまう物語です。
村人たちのモチベーションは偏見でしかないのに、村長も警察も教会も味方してくれず、そこに正義がない理不尽さは息苦しく観ていて辛かったです。
主人公かと思われたクズ男がなかなか本筋に絡んで来ず、彼がこのストーリーをどう着地させるのかと心配になる終盤でしたが、獣は一体何人なのか示唆に富んだ寓話的な結びで驚きと余韻を残す良いラストだったと思います。