スカポンタンバイク

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

4.0
面白かったですね。
ただ、予告から期待させられるクローネンバーグのボディホラーって所でいうと、意外と肩透かしを食らう所はあるのかなぁとは思った。でも、これがPG12かぁとは思った。凄えな。

話はかなりシンプルというか、短編小説みたいな感じ。近未来での人間のメタモルフォーゼは進化なのか癌なのか、人体への改造は反自然的で罰せられるべきものなのかといった問題提起に主人公ソールが謎解きとともに追求していく話。意外だったのは、ソールが自身の加速進化症候群に対して、肯定的な「進化」とは思っていない所。そんな自分との折り合いをつけるように、彼は臓器摘出手術をアートパフォーマンスとして行っている。それはある意味でクローネンバーグにとっての映画制作とも言えると思う。「クラッシュ」だと、ボディホラーの体験が倦怠期からの脱出法として描かれていた。しかし、今作のソールはそれにすら慣れてしまい、痛みを感じない状態にあるように見える。
そんな彼が後半、加速進化症候群を放置し、プラスチックを食べる少年の謎を追っていく末に痛みを取り戻すわけだが。個人的に残念だったのは、自身のメタモルフォーゼと外部からの異物を取り込んだ末に何が生まれるのかが見れなかった所だ。映画としては、そこの有無というのはさして重要ではないのだと思うけれど、クローネンバーグがあの先に何を見たのかは是非見てみたかったという気持ちはどうしてもある。
ただ、そこは是非とも、次回作以降で観れれば良いかなとも思う。再び舞い戻ったクローネンバーグがどんな映画を作っていこうというのか。非常に興味深いなぁと思う。