藍紺

聖地には蜘蛛が巣を張るの藍紺のレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.0
宗教を盾にして身勝手な正義を振りかざす人がいる限り、争い事がなくなる日は永久に来ないんだろうなと思わされる作品。家父長制、貧困、セックスワーカーへの差別、そこにイスラム社会の複雑さも相まってどこから解決していけばいいのか途方に暮れる。
イランで実際に起きた娼婦連続殺人事件をベースにしており、犯人がどんな暮らしをしているかが序盤から提示される。街の浄化と称して娼婦を次々に殺していく敬虔なイスラム教徒。いつも思うのだけど宗教の名のもとなら人殺しをしてもいいっていう倫理は何なんだろう?

犯人が逮捕され事件が解決しても間違った正義が次世代に継承されていく恐怖。ラストは強烈。虐げられている事に気付かないまま一生を終える女性もいるのだろう。ヒジャブを纏った少女が頭から離れない。

主演のザーラ・アミール・エブラヒミさんの経歴を辿ると、彼女自身も女性蔑視や差別に苦しんでこられた張本人であるとのこと。しかしそんな理不尽な社会の目に屈することなく今作品に携わり且つ演者としても好演されていた。その点においては唯一の救いを感じられて良かった。
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