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ノック 終末の訪問者のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.0
ただ映画でしか味わえない究極のドキドキを楽しめればそれでよい。良くも悪くもシャマラン監督の潔い映画観が感じられる作品でした。骨太でメッセージ性の強い原作小説から打って変わって中身空っぽのB級スリラーになった本作ですが、俳優陣の皆様の見事な演技、緊張感があり質の高い劇伴、監督独特のカメラワークも冴えわたり、シャマラン作品の中では相対的に"当たり"に該当すると思います。原作との違いと考察は別途ネタバレコメント欄で。

原作は新約聖書「ヨハネの黙示録の四騎士」を題材にした終末ホラー小説"The Cabin at the End of the World"で、聖書を基にしながらもイマドキな一家を主人公に配することで終始読者の信条を試しながらフェイクニュースやヘイトクライム、マイノリティへの人権侵害が蔓延する現代社会に警鐘を鳴らす重厚な作品になっています。が、それがシャマランの手にかかると...

養子の女の子ウェンが、パパ二人の両親エリックとアンドリューと森の中の丸太小屋で幸せな休日を過ごしていたところ、白・赤・黒・黄シャツの武装した四騎士が現れノックとともに小屋に侵入。「間もなくこの世界が滅亡する。あなたたちの一人を死でもって神に生贄として捧げることでしかこれは防げない」と三人に迫る。

そんな馬鹿げた話がと思うもテレビでは確かに恐ろしいニュースが次々と流れ、やはり信じざるを得ないのか?そんな中、アンドリューはこの四騎士の中にかつてゲイに対するヘイトで自分に暴行を加え刑務所入りになった人物がいると言い出し...

話はサクサク進んでいき、緊張感ある音響にドキドキしながらベン・オルドリッジ、ジョナサン・グロフ、デイヴ・バウティスタ、クリステン・クイの迫真の演技が堪能でき、全く飽きることなく100分があっという間に過ぎていきます。毎度お馴染みのシャマラン登場については、観てのお楽しみに!

サクッととりあえず流しとくこの感じ、インタビューで主演のベン・オルドリッジが「役作りは小説でしたよ」と言ってた意味がようわかった... シャマラン名物であるツッコミどころ満載感や不自然な会話、チープなCGも健在です。が、本作はアポカリプスが本当なのかどうかという話なので、この負のシャマランらしさがうまく効いているかも?

映画化に伴い後半以降のストーリーが変更され中身は全く無くなっているのでこの映画版に限って言えば、私は由緒正しい仏教徒だから元ネタであるヨハネの黙示録なんか知らんわ、という方も全然問題ないです(笑)。

正直これ、原作通りで作れば賞も十分狙えるレベルの作品になったはずなのに、こんな安っぽいストーリーの変更を行ったのは、シャマランなりの映画に対する信念なのか、読字障害で小説が理解できないだけなのか。まぁ前者だと思うけどそれにしてもね... まぁB級にしては出来の良いドキドキエンタメ映画としてお楽しみください!R指定だけど、本当にヤバい部分は映らないのでご心配なく。

そんなこんなでネタバレを含む原作と映画の違い&そのメッセージ・解釈については下のコメントで。

遊び心あふれるキャスティング?
ジョナサン・グロフ:HBOのドラマ「Looking」にジョナサンが友人と森の中の丸太小屋で休日を過ごすエピソードがある
ベン・オルドリッジ:相手役エリックの包帯姿は映画「Spoiler Alert」のバーでベンが披露するバンダナを彷彿とさせる

ウェンが好きな映画にちょっとニヤッ😊
昨年大手スタジオで初めてゲイのラブコメを公開、そして本作とLGBTQ+に関し一歩先を行くユニバーサルのディズニーに対する強烈にパンチの利いた嫌味🤣にも注目(めっちゃみんな笑ってた)!
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