Monsieurおむすび

ブラインドマン/タイタニックを見たくなかった盲目の男のMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

4.2
凄い映画だった。
盲目で下半身不髄のヤァーコ。
1人では出歩くどころか倒れたら起き上がる事もできないのに、ネットで知り合った自分と同じように重い病気を患う女性の死期を悟り、勇気を出して会いに行く物語。

ヤァーコの表情以外はほぼピントが合っていない彼の世界を追体験させる狭小の映像表現。ライフラインのスマホを落としただけ、電車に乗るだけの当たり前の日常が、彼の視点を通すと恐怖に満ちたサスペンスに写る。
最後の最後、やっとの思いで対面した女性の表情にフォーカスするカメラ、視覚で捉えることはできないが、手から伝わる互いの顔と顔に涙が込み上げた。

ヤァーコ演じるペトリ・ポイコライネンは実際に多発性硬化症を患う盲目の俳優。元々、友人関係のテーム・ニッキ監督といつ演じられなくなるかもわからないペトリの為に短期間で完成させたらしい。

傍目には不自由な身体で気の毒かもしれない。でも、どんな状況の人にだって自分の愛の為に踏み出す自由がある。同じように誰にだって愛を享受する権利があると、ペトリ・ポイコライネンの悲哀と自尊心を湛える眼差しが物語っていた。
Monsieurおむすび

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