TAK44マグナム

コラテラル・ダメージのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

コラテラル・ダメージ(2001年製作の映画)
3.6
舐めてた相手がシュワちゃんだった!!


アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクションスリラー。
妻子をテロで失った消防隊長が復讐を誓い、単身で南米コロンビアに潜入するという、普通に考えて有り得ないストーリーを大真面目に映像化しております。
しかし、それもシュワちゃん主演だからこその説得力。
現在だとこんな設定でもギリギリ成り立つ俳優はドウェウン・ジョンソンぐらいなものでしょう。

タイトルの「コラテラルダメージ」とは、戦争やテロ行為によって生じた「副次的な犠牲」という意味で、本作の場合は主人公の家族がテロによって犠牲になったことを劇中の登場人物が「仕方のない犠牲だった」と発言、主人公の怒りに火をつけてしまいぶん殴られるところからきています。


公開直前になって9.11が起きてしまったため、爆破テロの規模は大幅に修正され、加えて公開が延期されました。
それも仕方ないですね。
当初は飛行機をハイジャックする場面もあったとかで、さすがに未公開シーン集でもそのフッテージは収録されていません。


とりあえず、コロンビアに入るところが雑なのを筆頭に、シュワちゃんの都合に良い方向に物事が進みます。
一応、ゲリラに見つかるアクシデントもあるにはあるのですが、滝から落ちても無傷だし、現地の人たちは親切だし、困っていればジョン・タトゥーロやジョン・レグイザモが現れます。
レグイザモなんて、ほんと可哀想な役です。
そうそう、レグイザモの下手くそなラップ?が少し聴けますよ。

そんなこんなで、割と簡単にゲリラ基地に侵入したシュワちゃん。
得意の爆破技術を使って、復讐の相手であるウルフを暗殺しようとします。
え?これで終わっちゃうの?
と思ったら、ここから話は二転三転して、意外と面白く、そして考えさせられる方向へ転がって行きます。
少し捻りを効かせた展開に唸っていると、最後はやっぱりシュワちゃん映画、ゴリラのようなシュワちゃんがウホウホと、あれやこれやの大活躍ですよ。
あんた、本当にただの消防士なの?
元特殊部隊とか元刑事とか今更言い出さないでよね?って感じで大暴れ!
まぁ、シュワちゃんなんでね。
結局は暴れてくれないと納得できないんですけれどね(苦笑)


復讐の連鎖やら、アメリカにも正義などないやら、描きたいテーマはしっかりと伝わるので、それなりに骨太。
ただ、一般人がひとりでゲリラとは言え軍隊を相手にするという設定を受け入れられるかどうか、そこがキモと言えそうです。
アクション映画好きからすれば、シュワちゃんを見て舐めるほうがどうかしているのですが、世間の常識に照らし合わせると、どう考えてもリアリティが無さすぎるみたいです。
そこがダメな人は、とことんダメでしょう。それも仕方のない映画だと思います。

さりとて少しばかり擁護するなら、シュワちゃんには強い正義感(動機)と度胸、そして肉体があると冒頭の消防シーンで強調しています。
それに加えて、元々は爆破一般に関してのスペシャリストだったという事も語られます。
劇中、シュワちゃんは一度も銃器を使わず、あくまでも己の肉体と爆発や炎に関しての知識のみで戦うので、その点は苦しいながらもエクスキューズが用意されてあり、多少の荒唐無稽さがあっても大目に見て良いのではないでしょうか。
それにしても運が良すぎるし、強すぎますけれどね(汗)

監督のアンドリュー・デイヴィスは、チャック・ノリスやスティーブン・セガールなどの肉体派スターと組んだ経験が豊富で、フィルモグラフィをみても、どれも手堅くまとめてある作品ばかりの職人肌。
こういったA級とB級の狭間に位置するアクション映画にはもってこいの人材であり、一般人ではあってもシュワちゃんならやりかねないぞという空気感を、アーノルド・シュワルツェネッガーという俳優からひきだしていると思いました。
言い換えれば、シュワちゃんの、この頃はまだギリギリ健在であったオーラや有無を言わせぬ体格などの良い面を上手に見せています。
アクション俳優をうまく扱う術に長けている監督というイメージですね。

しかし、シュワちゃん自身は、本作(と、ターミネーター3)を最後に(政治活動はまた別として)一気に斜陽化してゆくわけですが・・・
(交差するようにドウェイン・ジョンソンが俳優としてメジャー化してゆくのは必然かも。主演作の「ランダウン」にはシュワちゃんもカメオ出演しています)


目につく批評を総合すると世間的には駄作認定されているようです。
この時期のシュワちゃん映画はどれも同じように低評価ではありますが、本作には特に忘れ去られた作品のようなイメージがつきまといます。
実際に観てみると地味でもないし、そこまでつまらなくもないのですが、やはり現実に9.11を経験した後では、およそ非現実的で、消防士がレスキューではなく破壊工作でヒーローになる馬鹿馬鹿しい映画にみえてしまったのかもしれませんね。
シュワちゃん主演だからこその能天気さが鼻につき、しかしシュワちゃんでなければ説得力に欠けるというジレンマが最後まで引っかかるのは事実ですが。


テロリズムの時代という現実がフィクションを超えてしまい、時期的にも、シュワちゃんというスターの賞味期限的にも、あまり適さないスタイルのアクション映画として凡作の烙印を押されてしまったようにも思えて残念です。
だからといって、非凡な傑作などとは口が裂けても言えませんけれど。

結果的に、本作に限ってはシュワちゃんという大きな存在が諸刃の刃になってしまい、無惨にも作品を殺してしまったのでしょう。
しかし、一方的なアメリカ万歳ではなく、テロとの戦いを一般人の視点から描こうとした意欲を買いたいところですけれどね。
どこまでも力任せで大味なのは、ご愛嬌と割り切って観るようにしましょう(苦笑)


セル・ブルーレイにて