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帰れない山のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
3.2
【時を共有し、時には拒絶し】
第75回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『帰れない山』が日本公開された。これが独特な時間の使い方をする作品であった。

最近の映画は、それもハリウッド大作だけじゃないと思うのだが、時間に縛られて窮屈に感じるような作品が多くなってきたように思える。限られた時間の中でこなすべきタスクを処理している感が透けて見えるせいだろう。それを考えた時、本作は豊穣な時間の使い方をしている。二人の男の幼少期から物語が始まる。山間部と会話で出てくるトリノを中心に、誰とどこで時間を共有するかを巡る話が展開される。家族との旅行は拒絶する。相棒との山小屋作りは時間をかけて共有する。インドに行ってしまっても、電話で繋がる。数年規模の行間が開くこともある。映画はまるで人生のような時間の使い方をするのだ。未来が見えない中、どのように人生が変わるか分からない状況下で、誰と時間を共にするかを選択する。それが十何年か後の伏線として機能する。あるいは、突然終わりを迎えることもある。映画は自然の流れに任せるように二人の男の生き様を雄大な自然をバックに描いていく。ナレーションが多いので、観る小説といった印象が強い作品ではあるが、2時間半豊かな時を過ごせた気分になった。
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