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こいつで、今夜もイート・イット アル・ヤンコビック物語のSPNminacoのレビュー・感想・評価

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病院で死亡宣告される幕開けから既に『オール・ザット・ジャズ』のパロディで、如何にもアル・ヤンコビックの「伝記映画」らしい。人生はパロディ、いや人生のパロディ。何か裏を読ませるかと思えば、そういう物語ですらないのがすごい。最初から最後まで徹底してパロディ精神を貫く。
暴力的な父に抑圧された少年時代から、作った替え歌が大ウケしてトントン拍子で夢を叶えるのも、苦労して逆境を乗り越えるサクセス・ストーリーを捻ったパロディ。ピーウィー・ハーマンやウルフマン・ジャックやディヴァインやウォーホルら有名人だらけのパーティが可笑しい。なにせ全員あからさまにモノマネのパロディだもん(ジョン・ディーコンひでえ)。
やがて「本歌と同じ値段で替え歌を買う客」は現実となり、本家のスターをしのぐ大スターが生まれる。それも“ウィアード”をくっ付けたアル自身のパロディだ。だがそんなパロディを拒絶すると、それを境にアルの人生パロディは更にとんでもないことに…。
しかも、これ神話のパロディでもある。父に拒絶され、バックバンドの三賢人に支えられ、メンターに導かれ、聖母に誘惑され、楽園を追放され、麻薬王を倒し、家に帰る…行きて帰りし「英雄の旅」物語。レコード会社兄弟や何を製造してるか不明な工場とかも、たぶん全部に元ネタがあるはず。そもそもパロディってすごくハイコンテクストなんだよね。
ミュージカル舞台も好評なダニエル・ラドクリフが、歌にアコーディオンにアクション(?)に、ショウマンぶりを発揮するパフォーマンス。リン・マヌエル・ミランダやジョシュ・グローバンも友情カメオ出演して、70〜80年代スターたちに扮した豪華キャストはノリノリ。本当の事実も少しだけ残してあるところがまたパロディらしく、まさに人を喰った(イート・イット!)トールテール。「これなら(バカバカしくて)本家も許してくれるだろう」ラインの替え歌なので後ろめたさもなく、気持ちよく笑わせてもらった。
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