SPNminaco

異人たちとの夏のSPNminacoのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
-
アンドリュー・ヘイのリメイク公開に備えて。撮影とプロダクションデザインが見事だった。光が差し込むウォームトーンの冥界と、暗くクールトーンな現代マンション、どちらにもぼうっと浮かぶ窓の灯。すーっと浮遊するカメラ。背景でゆらゆら揺れるカーテンは、あちら側とこちらを薄く隔てている。最後も工事現場の白いシートが、もう越えられないけれどそこで揺れ続ける。
この揺らぎが亡霊映画らしくてよかった。入り組んだ路地や階段を上がった2階までの道のりも、ドアを開けるだけも、あちらとこちらの境目は曖昧で、近くて遠い距離感。その温かさと冷ややかさは夏の夜と人の関係の両面。
英雄もまた居場所なく孤立したストレンジャー。実体や生の実感をもたらすのは冥界だ。そこでは現実で他者をケアしない英雄が無条件にケアされて、自分のための居場所がある。けど、彼を連れ戻すのは他人(といっても身内に近い立場)の男。最終的に写し鏡となった男同士のケアによって救われるのも良い。
「振り返ってはならぬ」冥界婚はいささか強引な付け足しにも思えるし、チーズナイフ?ってのが引っかかったけど、そうか、アイスクリーム・すき焼き・チーズの牛つながりか!鰻も含めて精進料理の逆なのね。2人に挟まれたTV画面(あそこだけテクニカラーの鮮やかさ)が『カルメン故郷に帰る』なのは、カルメンもストレンジャーだからかな。
SPNminaco

SPNminaco