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不思議惑星キン・ザ・ザのSPNminacoのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
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ほのぼの長閑なレトロSFかと思ったら、殺伐とマッドマックスだった!それに、思ったより良くできたアート映画&お伽噺。飛行物体とかアナクロなメカ類の数々は結構大掛かりに作られてて(セットは廃墟の再利用?)、撮影も全然チャチには見えない。だだっ広く白い砂漠に何を置いても面白いはずの、あのロケーション勝ち。
前触れなくいきなりポン!と飛ばされた瞬間と、きょとんとしたリアクション(普通!)が最高だ。迷子の異星で異文化交流は、郷に入ったら郷に従え。あっという間に通じるロシア語、鼻に鈴、上がったり下がったり見捨てられたり助けたりの珍道中。異星人は素朴なようで世知辛く、敵じゃないけど味方とも言えず、礼儀正しいようで無礼。
権力や階級、差別がはびこるのは地球と同じだ。一言で何でも言えるクー!は、言いたいことが言えないソ連だからこそ魔法の言語。マッチ命なのは砂漠に木がないからかな(そしてそれを独占するアルファ…)。第1章の唐突ラストは何だったんだ…
おじさんと弾けないバイオリン弾き、チャトル人バッツ人凸凹コンビは噛み合わないまま。それでも利害を越えて、いつしか他人ではなくなる。クー!とマーマーの歌声が、はるか遠い星雲を越えて通じ合う。美しく心温まるオチと、おじさんの演技がグッとくる。次第に小さな自己革命を遂げる小市民おじさん。その名演に、クー!
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