モモモ

ナワリヌイのモモモのレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
3.9
毒殺未遂とプーチンの隠し財産豪邸スクープでナワリヌイを断片的に知っている状態での鑑賞。ウクライナへの侵略戦争、そこに至るロシアという大国にして独裁国家の諸問題がほんの数年で始まっていたのではないと示すドキュメンタリー作品。
日本でも多くの人が知っている毒殺未遂事件に対するナワリヌイ側の「そんな馬鹿は事はしないだろ」をクレムリン側が打ち破る事で生じた生々しい反応で幕を開けた映画は有能な支援者の独自行動のお陰で「そんなスパイ映画じゃあるまいし」な驚くべき「エンタメ展開」に突入していく。
現実の人間に対してエンタメとは失礼に当たるかもしれないが、映画にしてしまっているのだから、そこは織り込み済みだろう。
「モスクワ4」を心の底から理解する事ができる点が逆に本作に恐ろしさを生む。
あまりのもしょうもないヒューマンエラーで綻びが生じても、それを暴力と権力で押しつぶすのが終盤戦。
「そんな馬鹿な」を実行し、真実を暴かれても権力を握り続ける現状。侵略戦争が続く現状。そんな「変わらない現実」の恐怖と失望に「諦めるな」と「我々には力があるんだ」と鼓舞する映画。アカデミー賞に喰い込む理由がよくわかる。
ナワリヌイが「自分を演出して見せている」様子を隠し撮り編集に組み込む事でプロパガンダとしてもバランスは取れているだろう。
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