ひでやん

ファンタスティック・プラネットのひでやんのレビュー・感想・評価

3.8
青い巨人が支配する惑星で。

ぶっ飛んだ発想力と想像力に感心。奇怪で不気味な生物や植物、独創的な建造物、強烈なドラーグ人のビジュアルなど、この世界観を70年代に描いた事に驚き。宮崎駿が今作を観て「日本のアニメには美術が不在だ」と痛感しつつ、躍動感のないモーションには懐疑的だったという。

そう、確かにモーションがぎこちない。その動きは切り絵アニメという手法が用いられているという。キャラクターを絵具や色鉛筆で描き、それらを切り抜いて背景の上で一つ一つ動かす手法で、4年をかけて原画デッサンを描いたという。なるほど、淡い色合いやぎこちなさはそういう事か。

クリスタルが咲く季節に口笛吹いて。ぱりんぱりんと砕けて巡る3つの季節。このクリスタル季が好きだった。全体的にシュールでサイケデリックでエキセントリックな悪夢で、不穏な音楽がそれに拍車をかける。気味が悪いんだけど中毒性あり。そんな惑星で描かれる物語は、人間の社会や歴史そのもの。

格差や差別、科学と宗教の対立、奴隷制度、虐殺に戦争などで、ガスを使った人間狩りは、ナチスによるユダヤ人虐殺を想起させた。生物界の頂点に君臨している人間が下等民族となり虫けらのように扱われる世界。蚊やハエをパンと叩き潰しても罪悪感などなく、ドラーグ人が人間にしているのはそれと同じである。虫が動物のようにかわいかったら虫愛護法で守られるんだろうな。かわいくないのでパン。

終盤でドラーグ人の秘密が明かされ、それが彼らの弱点となる。このあっけなさが人間の脆さを描いているようだった。テールはフランス語で「地球」か…なるほど。
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