ひでやん

反撥のひでやんのネタバレレビュー・内容・結末

反撥(1964年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

美しきカトリーヌ・ドヌーヴ、崩壊。

右目のクロースアップにクレジットが流れ、ゆっくりとカメラが引いていくオープニング。魂が抜けたようなドヌーヴが映し出され、その表情が尋常じゃない内面を物語る。

現在の右目ではじまり、幼少期の右目で終わる今作は、ラストカットの「家族写真」が男性恐怖症のルーツを暗示。キャロルの鋭い眼差し、その傍らに父親と思しき男。幼少期の性的虐待がトラウマとなり、想像の産物が壁から出現したのだろう。

キャロルが働く美容サロンは、スタッフも客も皆女性で女の世界。帰宅すると姉妹で同居する女の世界。そこに男が侵入するとキャロルにとって恐怖となる外部要素。コリンが店の中から外を歩くキャロルを見つけて窓を叩き、彼女を追いかけた後、店の中にいるキャロルに外から窓を叩くコリン。この「窓」が男を排したキャロルの壁として描かれているのだろう。

アパートは姉と2人で暮らす安住の地だったはず。そこに姉が連れ込む不倫相手の男。そしてコップに入れられた男の歯ブラシと剃刀。侵食される女の世界だ。姉が旅行に行くと平穏な時が訪れるのかと思いきや、崩壊する精神。旅先からピサの斜塔の絵葉書が届くが、その塔はまるでキャロルがいるアパートのようだ。キャロルの精神はピサの斜塔よりも傾いている。

台詞と音を最小限に抑えた独りの世界、そこに鳴り響く電話、呼び出しベル、妄想、幻覚などがキャロルを襲い、ついに破られる壁。守り続ける領域にズカズカと土足で入ってくる侵入者。体内に入った異物を吐き出すような反撥で、ヒッチコックのようなサイコホラーにゾッとした。右目のアップが忘れられない…。
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