ひでやん

めまいのひでやんのネタバレレビュー・内容・結末

めまい(1958年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

観る者も追体験する伝説のめまいショット。

瞳のクロースアップで画面が赤くなり、幾何学模様の渦巻きが次々と現れるオープニング。ソール・バスがデザインしためまいのイメージに惹き込まれる。不可解な行動に出る友人の妻を元刑事が尾行する前半は、なんといってもキム・ノヴァクの登場シーンが強烈。

赤い壁紙のレストラン、テーブルを埋める大勢の客の中で一際目を引くグリーンのドレス。その後ろ姿に近づくカメラ。他の客が目に入らず、異彩を放つ彼女しか見えなくなる。そして、マデリンが右側に振り向きスコティの後ろを通過した後、スコティが左側に目をやる。2人の視線が交わらない演出が秀逸。

グリーンのドレス、グリーンの車、花屋、花咲く墓地、絵画と同じ花束を持つマデリン。妖艶な魅力と謎に包まれた彼女に目が離せない。前半は亡霊に取り憑かれた女を追跡するミステリーで、後半は亡き女を求める男のラブロマンスという2部構成でありながら、後半は前半をなぞる反復となっている。

種明かしが意外と早い。これは予想外で驚いたが、終盤で見せた方が衝撃が大きかった。ジェイムズ・スチュワートの視点で観ていると、友人の妻に惚れちゃったり、瓜二つの女にマデリンの格好をさせたりで、身勝手で傲慢な男だなと思う。元刑事なら真実を知った時、問い詰めるべき相手は友人だろ、と思った。しかし、愛した女が理想となり、理想を求めてしまう気持ちは解る。ジュディは、ありのままの自分を愛してほしいが、演じた女を愛すなら、愛されたいから演じよう、という思いが切ない。

鐘楼の螺旋階段でのめまい。カメラをトラックバックしながら同時にズーム・アップする「ドリー・ズーム」という技法らしい。引いてアップって、こんなのよく思いついたな。アニメーションも使ったサイケデリックな夢のシーンも良かった。ホテルの窓から顔を出したマデリンが消えた謎、それが未回収でモヤモヤ。人間の記憶なんて曖昧という事か。

ヒッチコックが描いたストーリーを勝手に変えて、間違った解釈をしてみた。中盤の精神病院のシーンを境に、後半すべてスコティの妄想。ジュディは存在せず、スコティは病院のベッドの中…。違うけどね、そう考えるのも面白い。
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