ナガノヤスユ記

丹下左膳餘話 百萬兩の壺のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)
4.5
学生時代はなんだか物凄く苦労して観たのだが、気付けば廉価DVDが発売されていた。


江戸の世俗に生きる庶民の活劇なのだけど、百萬両というとんでもない記号を軸に、色んな価値の転倒が起きる。一言で済ませるなら、金より大事なものがある、という話なのかもしれないが、粋や人情といった表現だけでは割り切れない骨太なキャラクターたちが奔放に駆けまわる様は、見ていて単純に気持ちいい。全体がこれだけ喜劇調でありながら人間がステレオタイプに陥らない豊かさがある。

そして何より、時折見せる目の覚めるようなカメラワーク、ショットが軽妙洒脱の極み、まぎれもない江戸ッ子のエネルギーが画面全体に漲っていて、なんというか軽くブッとびかねない勢いなのである。