ナガノヤスユ記

肉体の冠のナガノヤスユ記のネタバレレビュー・内容・結末

肉体の冠(1951年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

男たちの醜い嫉妬の視線交錯と、情婦たちのたくましさ、つつましやかな連帯の対比。女がゲームの景品のように扱われているが、むしろこの虚しいゲームで人間性を奪われているのは男のほうだと思う。冒頭2回のダンス、見事なカメラワーク。出口のないヒエラルキーに絡めとられて命を落としていく男たちに対してヒロインが投げかける視線。怒りも憐れみも宿していて痛い。ラストの追跡から、その後鳴り響く銃声、最後の処刑台まで、それを見つめる者の視点がつとめて客観的に捉えられている。その距離感が、この物語をヒロイックな劇画として受容したい観客の甘い考えを突き放す。ヒロインの脳裏によみがえる、ありし日のダンスの光景は、ややベタでセンチメンタルだけど、ギリギリtoo muchにならない絶妙さだと思った。