ナガノヤスユ記

Dream Scenario(原題)のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

Dream Scenario(原題)(2023年製作の映画)
4.2
これは発想からしてなかなかいい。その後のツイスト的展開も、ギリギリ想像の範囲内かもしれないけど、102分という尺におさまる絶妙なラインだし、最後まで徹底的に不条理を貫いた脚本が素晴らしい。夢に道徳の入り込む余地はない。けれど、夢だからといって何でもアリになってしまわないのが、非常に現代的な抑制がきいている。主人公は、この精神の旅を通して何も変わっていない。一度も幸せになっていない。ほとんど何の変化もなく、ゆえに、まだ鑑賞からいくばくの時も経っていないというのに、すでに結末が朧げだ。思い出すのはただ、夢とも現実ともとれない悲喜劇の淵で、虚空を見つめる阿保面のニコラス・ケイジだけだ。けど、それが最高なのだ。ナンセンスがその領域に達すると、どんな社会派より人生を反映したドラマになり芸術になるという、この手の企画の最良の瞬間をたしかにかすめている。