atsuki

野いちごのatsukiのレビュー・感想・評価

野いちご(1957年製作の映画)
4.5
ある老医師が義理の娘と授与式へと車で向かう道中に、三角関係に揺れる若者達や喧嘩の絶えない夫婦と出会い、また故郷の別荘と母を訪ねながら自らの半生を辿る内に夢と現実が曖昧になって行くロードムービー。

訳もなく見せられる妻、息子夫婦、家政婦との確執や逆に老医師を慕る人々の存在など、彼が「どの様な人物だったのか?」が明らかになって行く様は面白い。だからこそ、その理由が分かるにつれて良くも悪くも全ての原因は自分にあるのかもしれないという真相は心苦しい。

故に半生辿りが地獄巡りになってしまうのだからどうしようもない。それをベルイマンらしいユーモアを添えながら夢と現実の混同を描き、原体験としての「野いちご」から人生を回顧し、老医師がケジメをつけて行くのは感動的。

針のない時計やのっぺらぼうなど随所に散りばめられた「死」の匂いも秀逸で、またそれがトラウマ的でもある。
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