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ノット・オッケー!のドントのレビュー・感想・評価

ノット・オッケー!(2022年製作の映画)
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 2022年。悪い映画だ。「私9.11を本国で観たり体験してないんですよぉ。あれって私たち世代の共通体験じゃないですかぁ」などと言うネット記者。バズりと承認欲求をこじらせた結果、写真合成でパリ旅行に行ったフリをする。が、何とパリ現地でテロ発生、で、テロ被害者を装ったらさぁ大変、バズって同情されアイコンとなりインフルエンサーに! わはは! 笑ってる場合ではない。
 事態や状況が雪だるま式にデカくなって引き返せなくなる話はままあるが、これが現代インターネットと噛み合って実にこの、怖いですね。バズると脳内で何らかの汁が出るんですが、さらに彼女、周りからは無条件に同情され記事は読まれ、と平凡な人生がアゲアゲになるのだから止まらない。もちろん行く先に待ち受けるのは破滅。というか破滅してるシーンからはじまる。怖いですね。まぁ本人が100%悪いんですが……。
 さらにこの人「もっとバズりたいな」「もっと体験に肉付けしないと」とどんどん表に出て、グループセラピー(輪になって話すアレ)にまで顔を出す。仲良くなった年下の、銃乱射事件のサバイバーから表現を借りてハッシュタグとか作る。罪悪感の妖精が現れたりするけど「ま、いっか! ヨシッ!」ってなもんで有名人街道を驀進する。もはや悪さは200%越え。ネタにされ嫌われて怒られて終わり。完。慈悲はない。
 しかし一方で「ネットでウソはやめましょう」「本当に頑張っている人もいます。迷惑です」「許さん、絶対に許さん」という場所に落ち着いてしまうのが、軽くポップ(ちと露悪的)な演出や設定の邪さに対して真面目すぎる感じは受けた。しかし真摯ではあるのだろう。それは間違いない。ゾーイ・ドゥイッチの「満たされない平凡な私」な演技が素晴らしく、彼女の雰囲気で作品が支えられている。
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