ドント

ゴジラxコング 新たなる帝国のドントのレビュー・感想・評価

3.6
 2024年。なんらかの祭りだったとしか言いようがない。地下世界で平和な日々を送っていたコングはある日奇妙な亀裂を見つける。時を前後して地上では奇妙なシグナルによってゴジラが大激怒、それは地下世界からのSOSだった! 暗黒帝国を支配する邪悪な王と、ゴジラ&コングのGK砲タッグのバトルがはじまる! 
 世界遺産や観光名所、いろんな街が容赦なくベゴンベゴンに大破壊される上に人類が困っている様子もろくに描写されないことからもわかるように、本作は怪獣、主にコングの物語である。コングの生活があり、コングの感情があり、コングの人生がある……。シャワーシーンまである。コングファンにはたまらないであろう。
 一方の人間はワーキャー逃げたり多少のヘルプをしたりもするが、ほぼどうでもいいレベルの後景へと沈んでいる。この人間パート、「怪獣バトルのために動いている」感がすごい。そもそも主軸が「悪の王をコングとゴジラが退け、コングが新たな王となる」ってんだから人間の入る余地などスキマしかないのだ。怪獣の働きが95で、人間のがんばりは5とか3くらいである。
 そしてこの、怪獣たちのセリフなきやりとりの雄弁さたるや。まるでサイレント映画のようで素晴らしい。怪獣に近い人々の無言のやりとりも美しい。その反面、普通の人間たちのやりとりはセリフが多い。「やった! 成功したんだ!」などと言葉に出す必要はない。
 そうなってくると、世界遺産がブッ壊れようがバトルで街が破壊されようが、人類などもはやどうでもよい。我々はただただ怪獣を主役に据えた物語に魅了されるばかりである。足蹴にされる老猿をコングが助ける『北斗の拳』、コングのある部位を悪役が「コイツこんなんなってるぜェ!」と嗤う『コブラ』みたいな場面もあった。ジャンプ漫画……すなわち王道。コングを主役に据えた王道物語……。
 他方、人間パートのまどろっこしさは軽減されているとは言えまだ強い。こちとら怪獣の気持ちになっているので多少工夫はされていてもかったるい。またラストバトルも前作と同じステージで似たような展開だったので、もう一発二発、頭が裏返るようなパンチが欲しかったところ。
 かつて「映画は男と女と銃があれば出来る」という言葉があった。本作は「怪獣と怪獣と怪獣」で出来ている。もはや男も女も銃も車も不要の時代が来た。末世を思わせる現代の憂鬱さを、人ならぬモノのストーリーで吹き飛ばすハレの映画と言えよう。映画館に走り己の中の獣性を取り戻せ!!
ドント

ドント