鹿苑寺と慈照寺

グッドバイ、バッドマガジンズの鹿苑寺と慈照寺のレビュー・感想・評価

4.2
お洒落な女性誌に配属されるかと思いきや男性向けアダルト雑誌編集部に配属されることになった森詩織。男性が何にエロさを感じるのかさっぱり分からない中、奮闘していく。

新宿テアトルで先ほど観てきました。
上映後に監督、出演者、主題歌を歌ったナギサワカリンさんのトークショー付きで鑑賞。

監督がおっしゃっていたことで印象的だったのは、本作の登場人物たちにはモデルがいるということ。本編の冒頭にも事実に基づく話とある。本作はもちろん主人公の成長ストーリーの側面もあるが、一方で斜陽産業になってしまったアダルト雑誌の実情を捉えた物語でもある。だから、タイトルが「グッドバイ、バッドマガジンズ」なのである。

最後にコンビでアダルト雑誌を買ったのはいつだろうか。10年以上は経過していると思う。その間、エロはどんどん
動画に切り替わっていく。劇中で言及されている通りコンビニでアダルト雑誌が置かれなくなったことが追い討ちをかけている。

そんな実情の中、主人公は奮闘していく。癖のある同僚たちに囲まれながら、やってみたいことを見つけ働き、徐々にやってみたいこととやるべきことの板挟みに合いながら疲弊していく。疲弊していく様は痛いほどよくわかる。自分にも身に覚えがあるし、多くの人に当てはまると思う。詩織のその怒りややるせなさが爆発するシーンがとても良かった。まさしくそうだ。私たちはこんなことするために本なんか作ってるんですか!と。

本作は「ハケンアニメ!」と対をなす作品と言ってもいいと思う。「やりたいこととやるべきことの板挟み」、「疲弊」というキーワードは一致しているが、良いものを作れば評価されるという軸を失っているのがアダルト雑誌だ。そもそも置かれなくなっているという現実は厳しい。営業担当が「中身を見てもらえればなあ」とこぼしていたのが印象的。

本作はコメディ映画としても優秀だった。現実を伝えるという軸はブラさずに的確にコメディ要素を入れてくるのが上手い。詩織が後輩にエロ見出しの作り方を指南するシーンでのエロ見出し乱発、「うち、ナックルズじゃねえんだよ」とか「16時間、生殖器を見続けてる」もめちゃくちゃ笑った。見出しもどれもありそうなものばかりで、あるあるネタとしてもめちゃくちゃ優秀。


以下は個人的なメモ
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「16時間、生殖器を見続けてる」

「私たちはこんなことするために本なんか作ってるんですか!」

「うちらナックルズじゃねえんだぞ」

雑誌の見出し、エロワード乱発
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