こなつ

エゴイストのこなつのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.0
2020年10月に50歳の若さで亡くなった雑誌編集者でありエッセイストの高山真さんの実体験をもとに描かれた自伝的小説の映像化。ノーマークでしたが、フィル友さんの情報で知りました。

同性愛者である2人の限りない愛。愛とはエゴなのか?どれだけの人が、これほど心から愛せる人を見つけられるのか?そんな思いに胸が熱くなりながら観続けました。

田舎町でゲイであることを隠して思春期を過ごしてきた浩輔(鈴木亮平)。大人になり上京して有名雑誌の編集者になった彼は、病気の母を支えながら働く青年・龍太(宮沢氷魚)と出会う。やがて二人は惹かれ合い、時には龍太の母(阿川佐和子)も交えながら親密な時間を過ごしていく。

役作りにストイックだと定評のある鈴木亮平の緻密な圧巻の演技に吸い込まれていく。透明感のある美しさ、健気な青年を演じる宮沢氷魚もまた素晴らしかった。

突然龍太との別れを経験した浩輔は、自分がこれまで「愛」だと思ってきた行動が自己満足で彼を追い詰めたのではないかと苦悩する。

そんな浩輔に優しく寄り添う龍太の母(阿川佐和子)の姿が涙を誘う。鈴木亮平も宮沢氷魚もあまりに自然体の演技で、これは本当に台本があるのかと思わせる会話シーンや場面が多々あった。周りを固める友人達をゲイの方達が熱演していて、普段はこんな風に会話しているんだと作品の中で覗くことが出来た気分だった。

愛するが故に生まれる葛藤をリアルに描き、人を愛するということは性別や年齢など関係ないそれ自体が特別なものなのだと感じさせてくれる作品。心に沁みる余韻が切なくも美しい物語だった。
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